国立研究開発法人産業技術総合研究所(中鉢良治理事長)は、沖縄県中頭郡北谷町(ちゃたんちょう)において「ラストマイル自動走行の実証評価」の出発式を行い、実証評価を開始した。
産総研は、経済産業省および国土交通省の今年度「高度な自動走行システムの社会実装に向けた研究開発・実証事業:専用空間における自動走行などを活用した端末交通システムの社会実装に向けた実証」を幹事機関として受託し、ヤマハ発動機(株)、(株)日立製作所、慶應義塾大学SFC研究所、豊田通商(株)などとともに、研究開発と実証を進めている。
30年度の社会実装に向けて
今回の事業では、端末交通システムを研究開発し平成30年度の社会実装に向けて、選定地の一つとして沖縄県・北谷町の協力を得て、実際に端末交通システムが求められている地域の環境で実証評価を行う。
端末交通システムは、鉄道やバスなど基幹交通システムと自宅や目的地との間、地域内といった短・中距離を補完する「ラストワンマイルモビリティ」とも呼ばれる次世代の交通システム。
今回の事業では、公共的な利用を前提とし、専門空間を確立することにより、自動走行技術を取り入れた地域の活性化などにつながる新しい交通手段の実現と社会実装を目指しており、導入場所の特徴や事業性などを鑑みて、小型電動カートと小型バスという乗車人数の異なる車両を用いて地域に応じた運行管理システムなどの開発を行っている。
北谷町は、公募の小型電動カート応用・開発の実証評価に選定された地域の一つ。実証環境の特徴から観光地モデルと分類し、観光施設やホテルなどを巡回する町有地の走路において、人などとの共存空間における自動走行を遠隔監視・操作システムを搭載した車両での社会実験となる。
現在、自動走行の実証実験は各地で行われているが、今回の遠隔監視・操作技術と自動走行技術を組み合わせた遠隔型自動走行システムとなる端末交通システムの社会実装に向けた実証実験は全国に先駆けたものとなる。
今回の走路は公道ではないため、警察庁が6月に策定した「遠隔型自動運転システムの公道実証実験にかかる道路使用許可の申請に対する取り扱いの基準」の対象外となるが、今後、安全性の観点から沖縄県警や地元警察署にも協力を要請しながら、基準に準拠した形で実証評価を進めることで、永平寺町や輪島市といった他の地域における行動実証実験に活かしていく予定。
管制システムを加えた実験も
出発式当日は、電磁誘導線などによる自動走行を実証評価の走路の一部となる1キロ弱の往復コース上や、センサーによる自動ブレーキ機能、遠隔監視・操作システムによる遠隔からの緊急停止や発進・停止、障害物への遠隔操作による回避対応など、遠隔型を含む自動走行デモンストレーションを行った。
今後は、10月以降に最適な配車や単路の安全性を確保する管制システムを加えた技術実証・評価を行い、その後、受容性評価などの実証実験を地域関係者の協力を得ながら行う計画だ。