国土交通省はこのほど、平成29年版交通政策白書(「平成28年度交通の動向」と「平成29年度交通政策」)を公表した。今回の白書では、「交通分野のユニバーサルデザイン化」をテーマとして掲げ、交通分野のユニバーサルデザイン化の背景等を踏まえつつ、その進捗状況、先進的な取組事例と今後の課題を紹介している。
交通分野のユニバーサルデザイン化の背景と経緯について、我が国では、働く高齢者や障害者が増加するとともに、外出頻度も高くなっており、社会参加が拡大。また、障害者権利条約の我が国の締結(2014年)も受けて障害者への社会意識が高まっている一方、昨年には駅ホームで視覚障害者が転落する痛ましい事故が発生する等、障害者が安全かつ円滑に移動できる環境を整えることが必要とした。
また、様々な国・地域からの訪日外国人旅行者が増加し、言葉の壁を越えて容易に移動できる環境を整えることも必要との考えも示している。
これに加えて、2020年東京五輪・パラリンピック競技大会の開催等も踏まえた対応も必要と指摘している。
進捗状況については、法律に基づく義務付け基準のもと、公共交通機関の車両等や旅客施設等のバリアフリー化は一定程度進捗していることを記述。
その一方で、利用者の実感としては、必ずしも十分にバリアフリー化が進捗しているとは捉えられていないと指摘している。
また、ノンステップバスや鉄軌道駅など地方部での取組が遅れていることも取り上げた。
さらに、利用者は公共交通機関におけるハード面のバリアフリー化のみならず、人的対応も重要視していることも指摘している。
駅ホーム転落防止対策については、昨年の視覚障害者による転落事故を受け、「駅ホームにおける安全性向上のための検討会」において、更なるハード・ソフト両面からの転落防止に係る総合的な安全対策の取組について中間とりまとめを実施したことを紹介している。
鉄道事業者においては、転落事故や中間とりまとめも踏まえ、駅ホーム転落防止対策の具体的方針を公表したことを取り上げている。
ホームドアの導入促進のため、車両ドア位置の相違、車両停止精度、高額な設置コスト等の課題の解決に向けて、新型ホームドアの技術開発を進めていることを記述している。
交通分野のユニバーサルデザイン化を進める上では、障害の有無、年齢、性別、人種等にかかわらず、誰もが利用しやすい環境をつくるという考え方に立って設計していくことが必要との考えを示した。
このため、①地方部も含めたより利用しやすいハード面のバリアフリー化の推進、②地域の面的なユニバーサルデザイン化の推進、③心のバリアフリーの推進、④言葉のバリアフリーの推進、⑤ICTを活用した情報の提供といった5つの視点に立って取組を進めることが効果的とした。
このほか、2020年東京オリンピック・パラリンピック競技大会を契機として、交通分野のユニバーサルデザイン化を強化することが必要であること等も記述している。