国立社会保障・人口問題研究所の予測では、少子高齢化の進行で、2030年には年少人口が1204万人、生産年齢人口が6773万人まで減少。わが国の総人口の3割が65歳以上となる。人口減少社会にあって、IT、IoTなどをフル活用し先進国として前進するよう、国際社会の一員として確固たる地位を占める日本人の育成に向けて、小学校からの英語や高校での情報処理科目の必修化など教育面においてもすでに徐々にではあるか改革が進んでいる。
また、世界上位の経済大国としての豊かな生活を維持し、より進展させていく方策の一環として政府は、働き方改革を提唱している。定年延長や女性の就労参加、パート職員や非正規社員の処遇などの改革が進展していくだろう。また、高齢化が今後さらに進むことを逆手にとれば、人生100年社会」を目指し、老後の健康で心豊かな人生をどう形成していくのかといった社会の仕組み・あり方を考えていくことが重要になってくる。
働き方改革の次は「学び」の改革
社会の急速な変化を踏まえ、人々が幸福な人生を歩んでいくためにどう「学び」を組み入れていくかということが今後、非常に大きな政策課題としてなってくるのではないか。人材をどう育成していくのか、あるいは高齢者を含め人々の能力を高めていく「学び」をどうつくっていくのかが重要になってくるだろう。そのためには、教育やイノベーションへの投資をどのように伸ばしていくのかが大切だ。教育投資や人的投資のあり方についての官民あげての国民的な議論を大いに期待したい。
社会のニーズに応えるカリキュラムの提供を
そうした中で、現在の大学教育が、社会のニーズや国民の期待に応えているのかといったことが問われてくるだろう。例えば、ITに関するリカレント教育について、大学において社会のニーズに応えた社会人向けのカリキュラムを用意している大学がどれだけあるだろうか。
企業からは社会人のリカレントのための大学院を早く作ってほしいといった強い要望が出されているという。大学や大学院の質・量についての考察を踏まえながら、危機感を持って一つひとつのニーズに具体的にしっかり応えていく必要があるだろう。社会変化のスピードやニーズに応えていくためには、例えば、予算制度の改革やマネジメント改革などを打ち出していくことも考えられる。
政府が取り組んでいる地方創生政策の中で地方に所在する大学の役割もまた、より重要性を増してくる。東京への一極集中を嘆く前に、地方にあって各自の持ち場たる大学を核にして、地域の産業や町づくりの振興、産学連携の進展などを活発にさせていくことが地方大学の活性化にもつながっていくと考えられる。そのためには地域の要請に応えられるような体制やカリキュラムといった「質」の内容が問われてくるだろう。それぞれの大学の経営力や構成員である教員、職員の能力が問われているということだろう。