総務省の情報通信審議会電気通信事業政策部会(部会長:山内弘隆一橋大学大学院商学研究科教授)はこのほど、「固定電話網の円滑な移行の在り方」一次答申~移行後のIP網のあるべき姿~(案)を公表した。答申では、固定通信市場で拡大傾向にある0AB~J IP電話(光IP電話を含む)や光ブロードバンドへの移行を見据えた競争環境整備を促進し、メタル電話利用者の移行を促すとともに、過度な負担発生を回避しながら、移行に直ちに対応できない利用者に対しては適切な補完的措置(メタルIP電話等)を提供することで、移行によるメリットを最大化し、想定されるデメリットを最小化するための政策の方向性や講じるべき施策等を示している。
IP制への移行の意義について、PSTNからIP網への円滑な移行を図るためには、2025年頃に中継交換機等の維持限界を迎えるとされている現状やIP網への移行の意義に関する理解を醸成するとともに、移行に係る必要な情報を開示することで、積極的な移行の流れを生み出すことが重要との考えを示した。
その上で、事業者は、IP網への移行から生まれるメリットを最大に活かした多様なサービスの提供に努め、NTT東日本・西日本は、これに加え、こうした多様なサービスが提供されるよう、他の事業者に対して競争基盤の提供を行う。事業者と行政は、こうした取組も踏まえつつ、互いに連携し、IP網への移行の意義・メリットに関して広く国民への周知に努め、円滑な移行を促すよう求めた。
また、移行に係る情報の速やかな開示も求めている。
固定電話サービスの信頼性・品質、提供エリア、料金水準の確保については、IP網への移行に伴い、電気通信サービスの「信頼性」や「品質」等を確保するために新たな課題が生じる場合には、公正な競争環境を確保しつつ、必ずしも事業者の経済合理性の視点だけでなく、確保すべき利用者利益も十分に勘案して、必要な設備規律(技術基準)の新たな整備や、利用者への説明・周知・対応方策の提供等が十分に図られるための措置等が必要とした。
利用者料金規制の在り方については、メタルIP電話(ISDN電話及び公衆電話も含む)を特定電気通信役務として位置づけ、現行の加入電話と同等の利用者料金規制(プライスキャップ規制等)を課すことが適当とした。
移行に伴い終了するサービス等に関する利用者利益の保護については、INSネット(ディジタル通信モード)の終了に伴う対応として、NTTに対し、代替案等の提供条件の検証、補完策等の検証環境の提供、サービス終了時期・意向スケジュール作成などに留意して対応を行うよう求めている。
NGN(次世代ネットワーク)の接続ルールの整備においては、接続約款メニューの見直し、接続協議の円滑化とNGNに関する情報開示の充実等、NGNのオープン化等の接続ルールの検討などが必要としている。
IP網への移行に伴う電話の競争ルールの見直しにおいては、「双方向番号ポータビリティ」を利用可能な地理的範囲を、番号区画の範囲内とする「ロケーションポータビリティ」の拡大について検討することなどを求めた。
アクセス回線におけるサービスの競争環境整備については、光回線への移行促進や公正競争環境の整備に向けた取組、接続料と利用者料金との関係についての検証(スタックテスト)などが必要とした。