政府は11月22日に「新たな総合経済対策」を、29日に今年度の補正予算案を閣議決定しました。
現在開かれている臨時国会で審議されます。与党が過半数割れとなったなか、先行きは不透明な部分もあります。ただ、既に与党は国民民主党とのすり合わせを概ね終えていますので、原案通りの成立に向けて議論が進むと予測されます。
この補正予算案には、介護分野の支援策も盛り込まれています。
まずは、介護従事者の更なる処遇改善を図る補助金を支給する方針が示されました。これは今年度の介護報酬改定で実施された処遇改善加算の拡充・一本化に続き、来年以降の更なる賃上げにつながる施策です。
予算額は806億円、介護職員1人あたり5.4万円の規模となり、月額でみると9000円×6ヵ月分と想定されています。支給対象は、処遇改善加算を算定している事業所。生産性向上や職場環境改善に取り組んでいることが支給要件となります。
ただし、今回の補助金は、その使途が必ずしも介護従事者への支給のみに限定されたものではありません。事業者が職場環境改善などの経費として活用することもできるため、介護従事者の賃上げにどれくらい寄与するかが不透明な側面もあります。
懸念点はそれだけではありません。支給対象から、居宅介護支援事業所がまたも外れることになりました。目下の厳しい人材不足などを勘案すると、私としても不本意で残念な結果です。現場のケアマネジャーからの強い反発も予測されます。
もっとも、居宅介護支援のケアマネジャーをめぐっては現在、厚生労働省の検討会で今後の対策の「中間整理案」が示されているところです。
厚労省はその中に、「他産業・同業他職種に見劣りしない処遇を確保する」と明記しました。この「中間整理案」が確定した後に、今後の対策が検討されていくスケジュールになるでしょう。今回は残念ですがこれからの追加策に期待したいところです。
今後については併せて、処遇改善加算の算定率を高めるための要件緩和の措置が講じられる可能性も示唆されています。この点にも、大きな期待を寄せたいと思います。
補正予算案にはこのほか、介護事業所・施設のテクノロジーの導入・活用の支援、訪問介護事業所の人材確保・経営改善の支援などに充てる財源も盛り込まれました。いずれも自治体との連携、運用面の様々な工夫などを含め、大事な予算をより有効に活用する努力が求められるでしょう。
どの施策も今後の国会論戦の行方、より詳細な制度の内容が注目されます。事業所・施設の経営環境は厳しさを増しているため、充実した支援策の速やかな実行に期待したいと思います。
併せて、未だ不十分だと言わざるを得ない支援策については、来年度予算などによる更なる対応が必要ではないでしょうか。特に介護従事者の処遇改善。今回の補正予算案では9000円×6ヵ月分となりましたが、それ以降の賃上げの財源確保、更なる追加的な措置をどう講じるかが、今後の大きなポイントになるでしょう。