農研機構は11月22日、「蛾類の飛来を防ぐ超音波防除技術 標準作業手順書」を公開した。その内容では、農業害虫の防除の際に、殺虫剤の利用頻度が依然として高いヤガ類などの蛾類害虫を対象に、超音波を用いた防除技術の手順を紹介している。また、この防除技術では、蛾類が逃げ出す「忌避超音波」をほ場の周囲に照射することで、農作物に産みつけられるヤガ類の卵の数を減少させ、ヤガ類の幼虫を防除するために使用されている殺虫剤の散布回数を大幅に削減することを可能にする。
多くの蛾類は聴覚器官(耳)を持ち、虫を捕食するコウモリに食べられないよう、コウモリの発する超音波から逃げ出す行動習性を持っている。そのため、蛾類が逃げ出す超音波をほ場の周囲に照射することで、ヤガ類が産卵のためにほ場へ飛来することを阻害できる。
近年、農作物への被害が増加傾向にあるヤガ類のハスモンヨトウ、シロイチモジヨトウを防除対象として行われたこの防除技術のほ場試験では、産卵数あるいは農作物の被害株数を90%以上抑制し、慣行栽培で施用される殺虫剤の散布回数を最大で約90%削減することができた。
今回公表された手順書では、蛾類が逃げ出す「忌避超音波」を広範囲に照射可能な装置の活用方法と留意点を導入事例とともに紹介し、防除技術の実践までのノウハウを解説している。