2024年8月30日 国と地方のパートナーシップ強化 全国知事会が地方分権改革の推進で要請

全国知事会は8月22日、松本総務大臣に対し、「地方分権改革の推進について」要請を行った。この中で、国と地方のパートナーシップの強化、地方分権を実感できる改革の深化、地方分権を推進するための枠組みの強化、地方分権改革の一層の推進を図るための地方税財政の充実等などを求めている。

平成5年6月の衆参両院における憲政史上初めてとなる地方分権の推進に関する決議以降、機関委任事務制度の廃止による裁量の拡大、国から地方への税源移譲、農地転用や地方版ハローワーク等の権限移譲や義務付け・枠付けの見直しなど、地方分権改革は着実に進展してきた。

しかし、法令の規律密度の高さや「従うべき基準」をはじめとした国の関与などにより、地方が自ら意思決定するための自治立法権を十分に行使できない現状が続いている。さらに令和6年度の地方自治法の一部改正により、国の地方公共団体に対する補充的な指示の規定が盛り込まれたが、運用次第では憲法で保障された地方自治の本旨や地方分権改革により実現した国と地方の対等・協力の関係が損なわれるおそれもある。

また、感染症や相次ぐ災害への対応、持続可能な社会保障制度の構築や、深刻さを増す少子化をはじめとする我が国の諸課題の解決に向けて、国と地方の役割分担について責任と権限の不一致を解消し、執行体制を踏まえて資源配分を行い、協力・連携して取り組む必要がある。加えて、持続可能な開発目標(SDGs)の達成に向けた取組の推進が求められており、国・地方を通じた課題として受け止められる中、地域の多様性の維持・発展が一層重要となっている。

地方は自らの判断と責任において役割を果たすとともに、個性豊かな地域がそれぞれの地域のことは地域で決定し、地域の実情に応じた施策を実施できるよう、国民的運動の上に地方分権をさらに推進していく必要がある。

地方分権改革の推進についての要請事項のうち、国と地方のパートナーシップの強化では、国と地方の協議の充実、多様な行政主体の連携、国と地方の役割分担の適正化を求めた。

地方分権を実感できる改革の深化では、自治立法権の拡充・強化、「従うべき基準」の見直し、計画策定等の見直し、事務・権限の円滑な移譲等、全国一律の基準で実施する事務のあり方の見直し、「裁定的関与」の見直し、地方公務員関連法令の見直しを求めた。

地方分権を推進するための枠組みの強化では、立法プロセスへの地方の参画、「地方分権改革特区」の導入等、「提案募集方式」の見直しを提言した。

このほか、地方分権改革を推進するにあたり、さらに検討を深めるべき事項として、従来から議論のある条例による「上書き権」の問題に関しては、現行の法体系全体との整合性や個別法の趣旨目的などを踏まえつつ、地域の実情に応じた施策を地方が実施できるよう、法令の規律密度の緩和による自治立法権の拡充・強化と併せて、罰則のあり方についての検討も含め、引き続き法律と条例の関係についての議論を深めていくことを求めた。

また、地方分権改革のこれまでの成果の上に立ち、国の立法プロセスに地方の声を一層反映していくとの観点から、憲法改正に向けた議論において、地方自治の基本である住民自治と団体自治を憲法に明記することや、参議院選挙区の合区の早期解消、地域代表制のあり方、自治立法権・自治財政権の拡充・強化などの議論を積極的に行うこととしている。


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