特許庁は、令和5年度産業財産権制度問題調査研究において、知財エコシステムにおけるジェンダーの多様性と包摂性に関する調査研究を行い、知財エコシステムにおける女性活躍の現状と課題の整理と、女性活躍を促進するための環境整備の在り方について検討を行うとともに、知財エコシステムで活躍する女性人材の事例とマネジメント層の考え等に関する情報を取りまとめた「Diversity&Innovation~知財エコシステム活性化のカギとなる女性活躍事例~」を5月17日に作成した。
持続可能な経済成長を実現するために、女性の活躍をはじめとしたダイバーシティの推進が求められている。我が国では、ジェンダーダイバーシティに関連する施策が推進されているが、女性研究者の割合は増加しつつあるものの、依然として諸外国と比べると低い水準にある。
ジェンダーダイバーシティがイノベーションや企業業績に与える影響は、いくつかの研究で検証されており、男性のみが発明者の特許よりも、男女の発明者が関わっている特許の方が、経済的価値が高いという報告や、ジェンダーダイバーシティが高い企業ほど財務指標が良いことを示唆するデータが複数存在する。このように、ジェンダーダイバーシティを担保することが、イノベーションや企業業績へ貢献する可能性があることから、我が国としても知財エコシステムを構成する環境において、ジェンダーダイバーシティの観点から取組を進めていく必要がある。
そこで特許庁では、知財エコシステムにおける女性人材の現状と課題を整理し、知財エコシステムにおける多様性と包摂性を推進するために、女性の活躍を促進するための環境整備の在り方の検討を行い、事例集を取りまとめ公表した。
事例集は、組織においてマネジメント等の立場を担っている方に対して、組織でのダイバーシティを高めるきっかけとして活用いただけるもの。また、それだけではなく、様々な人に対しても、知財エコシステムでの仕事の魅力を感じていただき、興味を持っていただくことも狙いとしている。
知財エコシステムの中で働くことを選択した女性人材が活躍し、イノベーションへ貢献できるようなより良い環境を整備するには、制度だけでなく組織・周囲の雰囲気や文化の醸成が必要なことから、研究者や知財専門家等、知財エコシステムを構成するプレーヤーに着目し、知財エコシステムの中で活躍する女性人材のストーリーを取りまとめるとともに、そうした人材をマネジメントする立場にも着目し、組織においてジェンダー等のダイバーシティを高めることの意義や効果について取りまとめた。