地域包括支援センターは、介護保険制度の枠組みで最も重要な拠点の1つである。
しかし、専門職が定着せず、一部を除いて本来業務の遂行能力に疑問が持たれている。今後、「包括」ではなく「崩壊」センターになるのではないかと強く懸念される状況だ。
私はかつて地域包括支援センターで勤務した経験があり、それだけあって強い思い入れがある。そこで、来年度の介護報酬改定の内容を鑑みながら考えてみたい。
◆ 介護予防プランが「負担」に
地域包括支援センターへのヒアリング調査をしていると、献身的に働いているものの負担が重く、限界を感じている専門職の声を聞く。本当に多忙な業務で頭が下がる思いである。
もっとも、このような厳しい状況は一部を除いて簡単には打開できず、放っておけば今後も問題が深刻化してしまうだろう。その意味から、来年度の介護報酬改定で注目すべき点は介護予防プラン(介護予防支援費)の単価であったが、残念ながら事態が好転する兆しは見えなかった。
確かに、地域包括支援センターがプランを担当する場合は442単位、居宅介護支援事業所が直に担う場合は472単位と上がった。
しかし、この程度のアップでは、居宅介護支援事業所が積極的に介護予防プランを引き受けるとは考えにくい。これは介護報酬改定に十分な予算を投じない政府全体の問題だ。決して厚生労働省だけが悪いわけではない。
モニタリングでICTの活用を認めるなど、現場の負担を軽減する施策も同時に展開されるようだが、それも問題解決には至らないであろう。今後、地域包括支援センターの機能は大幅に低下していくと予測する。
◆ 地域包括支援センターの負担超過
言うまでもなく、地域包括支援センターの職員の負担を重くしているのは、介護予防プランの業務に追われてしまうことだ。そして、本来の総合相談、地域のネットワークづくり、医療と介護の連携などに十分な時間を割けない状況にある。
政府が考えているように、介護予防プランを居宅介護支援事業所が担ってくれれば問題は解決へ向かう。だが、周知のようにケアマネジャー不足も深刻になりつつある。要介護の高齢者すらケアマネ探しに苦労しているのが実態だ。
居宅介護支援事業所にとっても、報酬単価が低い介護予防プランを引き受けるより要介護者を担当する方が、経営的にメリットが大きい。かつて、介護予防プランを多く請け負ってくれていた時代は、まだケアマネ不足が顕在化する前であった。
◆ 最低でも600単位以上
筆者は、居宅介護支援事業所が直に介護予防プランを担う単価について、最低でも600単位以上だと考えている。これは制度発足当初、要支援の居宅介護支援費が650単位であったことから類推される。介護予防プランの報酬単価の更なる引き上げは、不可欠ではないだろうか。
もっとも、中長期的には、市町村に最低1ヵ所は直営の地域包括支援センターを設けることを義務化し、公務員がその職務を一定程度担う仕組みにしていくべきだろう。
そもそも、自治体の委託費を中心としたやりくりでは充分なマンパワーを確保できず、専門職の定着が難しい。また、地域包括支援センターの機能・業務内容は公共サービスの性格が強い。公務員が担当すべき仕事が多いと考える。
地域包括支援センターが「崩壊」せず、安定した機能・役割を果たすためには、専門職の定着が絶対条件である。サービスの質は専門職の力量次第と言われるが、そこには長く働き続ける職員がいるか否かが大きく影響する。政府は早急に地域包括支援センターの基盤強化を検討するべきだ。