NEDO(国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構)はグリーンイノベーション基金事業の一環として、「2050年カーボンニュートラル」の実現を目指し、「製造分野における熱プロセスの脱炭素化」プロジェクト(予算総額304.1億円)に着手する。
カーボンニュートラル対応型の工業炉に必要となる燃焼技術、燃焼炉から電気炉への転換を進めるために不可欠な電気炉の受電容量低減・高効率化技術などの確立と社会実装に向けたテーマに取り組む。
具体的には、「カーボンニュートラル対応工業炉に関する共通基盤技術の開発」、「金属製品を取り扱うアンモニア燃焼工業炉の技術確立」、「金属製品を取り扱う水素燃焼工業炉の技術確立」、「電気炉の受電設備容量等の低減・高効率化に関する技術の確立」の研究開発・実証を行う。カーボンニュートラル対応型の工業炉の開発と社会実装により、脱炭素社会の実現に貢献するとともに、日本の製造業の国際競争力強化を目指す。
2兆円に7500億円積増し
政府が掲げた2050年までに温室効果ガスの排出量を全体としてゼロにする目標は従来の政府方針を大幅に前倒しするもので、実現に向けエネルギー・産業部門の構造転換や大胆な投資によるイノベーションなど現行の取り組みを大きく加速させる必要がある。
このため、経済産業省はNEDOに総額2兆円の基金をつくり、官民で野心的・具体的な目標を共有した上で、これに経営課題として取り組む企業などを研究開発・実証から社会実装まで10年間継続して支援するグリーンイノベーション基金事業を立ち上げた。
この基金事業はグリーン成長戦略で実行計画を策定している重点分野を支援対象としている。また、基金には、令和4年度2次補正予算により3000億円が積み増しされており、令和5年度当初予算により4564億円が積み増しされる。
電気炉の小型化・省エネ化
日本の産業における二酸化炭素(CO2)排出量のうち、約3割を製造業が占めている。中でも金属を加熱する熱プロセスに用いられる工業炉から多くのCO2が排出されていることから、製造分野における熱プロセスの脱炭素化は喫緊の課題。熱プロセスに用いられる工業炉は大別すると、燃料を燃焼させて加熱する「燃焼炉」と、電気で加熱する「電気炉」の2種類。
このうち燃焼炉は、化石燃料である天然ガスなどが燃料となるため、脱炭素化に向けて、燃焼時にCO2を排出しないアンモニアや水素などの代替燃料の活用が期待されているが、燃焼安定性、窒素酸化物低減などを実現する燃焼技術の確立が課題となる。
一方、電気炉は、脱炭素化の実現に向けて有力な選択肢と言えるが、燃焼炉から電気炉への転換に際して、特別高圧電力の契約や受電設備の設置などの課題がある。
経済性や効率性といった電気炉の特性を踏まえると、燃焼炉の選択肢も確立しておきつつ、電気炉の小型化・省エネルギー化などを進めることが重要となる。