ケアマネジャーが切り盛りする珍しいカフェを東京都新宿区で見つけた。お客さんから介護などの相談を無料で受けるほか、地域づくり、街おこしにも力を入れる熱心なお店だ。
「街なかに、どんな人でも気軽に立ち寄れる場所が欲しい。介護・福祉・生活全般の相談をもっと気軽にできる場所を作りたい。辿り着いた答えがカフェだった」
ここは「Sunnydays Cafe」。先頭に立って運営を担う主任介護支援専門員の森岡真也さんは、上記のように話す。
運営するのは株式会社モテギ。新宿区や渋谷区で居宅介護支援、訪問介護などを展開する在宅の介護事業者だ。この地域で長く、多くの利用者を支えてきた実績がある。
お店のオープンは昨年6月。1階がコワーキングスペースも兼ねたカフェエリアで、地下にはキッチンとテーブル席がある。
営業中はケアマネ、サービス提供責任者など専門職が常駐。介護・福祉のことはもちろん、日常生活のちょっとした悩みも含めて幅広い相談を受け入れている。
関わるスタッフは森岡さんを含めて15人ほど。それぞれが本職も担いながら、シフトを組んで代わる代わるお店に入っている。料理を作る係、相談を受ける係など、個々の得意分野を踏まえて役割分担をしているという。
メニューも多彩だ。コーヒー、紅茶、ソフトドリンクに加えて、地域の福祉作業所から仕入れたパンなどを販売。スパイスカレーやうどん、定食といった手作りの日替わりランチにも力を入れている(日替わりランチは管理栄養士やヘルパーらが調理・提供)。ビールなどアルコールも出すという。
森岡さんらがカフェをオープンした原点は、やはり介護者として多くの難しい課題に向き合ってきた経験だ。
「地域のことを知っているように振る舞っていても、自分はまだまだ何も分かっていないのではないか」。そんな思いが徐々に強まった。地域への理解を深めながら貢献していける事業を考え、それを思い切って行動に移した。
常連の女性客は、「よく分からないことをみんな解決して頂いて…。本当に助かっています」と喜ぶ。相談に来るといつも親切に対応してくれる、と笑顔で話していた。
活動に手応えを感じるなか、小学生の介護体験会や福祉用具の展示会、簡単な音楽イベントなどの催しも始めた。森岡さんは、「地域のお客さんを更に増やせれば、また違う景色が見えてくる。もともとは介護相談もできるカフェとしてオープンしたが、そこに縛られず広く地域に貢献していきたい」と意気込む。
ミュージシャンとしても活躍されている管理栄養士の奥村伸二さんは、「夜も工夫して音楽イベントなどを開くことで、地域の皆さんに〝何かやっているな〟と思ってもらえれば」と語った。今も新たな企画を構想中だ。
「訪れた人に想いを寄せ、必要があればさりげなく支えたい。人と人をもっと自然につないでいきたい」。
カフェを立ち上げた背景には、そんな思いもあった。店内には温かく穏やかな空気が流れている。悩んでいる人を待ち構えるような雰囲気を出すのではなく、町の喫茶店としてそれとなく地域を見守り、温めることが理想だという。
「お店でうつ病の人と向き合い、徐々に回復していくプロセスをみんなで支援することもできた」
取材中、相談に訪れた地域住民の助けになれた経験を話す森岡さんらは、とても充実しているように見えた。良い成果を1つでも増やしていければ − 。そんな思いを胸に今日もカフェをオープンしている。