NEDO(国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構)の「高効率・高速処理を可能とするAIチップ・次世代コンピューティングの技術開発」で日本電気(株)と(株)ノーチラス・テクノロジーズは、世界最速レベルの性能を持つリレーショナルデータベース管理システム「劔(Tsurugi)」を開発した。
劔は、次世代のデータベースに用いられるハードウエア環境(メニーコア・大容量メモリーなど)に適合したシステムで、ハードウエアの性能が向上するほどシステムの性能も高まる特性を有している。
劔の導入によって、複雑なバッチ処理とオンライン処理をハイスピードで同時に行うことが可能となり、例えば画像データをカメラで取り込みながらリアルタイムでの解析や、ペタバイト級データの高速処理を実現するなど、情報処理基盤を一層強力にすることができる。7月10日にアーリーアクセス版を、9月下旬にオープンソース版を劔コミュニティサイトで公開する。
現在、世界の情報産業を支えるデータベースのうち、中央演算処理装置(CPU)やメモリーなどハードウエアは進化を継続している一方、管理ソフトウエアは、依然として旧来のハードウエア環境を前提に設計されている。
その前提とするハードウエア性能が低いままの動作を想定して設計されており、高性能なハードウエアなら実現できる処理が選択肢になく、効率的に大量のデータを高速に処理できないことが大きな課題となっている。
また、現在のデータベース管理システムは海外企業によるシステム提供が主流で、日本の情報産業の競争力強化を実現するためには、高い競争力を有する国産のシステムの普及が重要な一手となる。
劔は、バッチ処理中にデータの編集や、新規データの追加ができない制限(シングルバージョン・ロック制御・ストレージと並行性制御の癒着による非効率なアーキテクチャー)がある従前のデータベースとは異なり、データベースの分散化を前提とし、ほとんどすべての構成要素を従来とは異なる方針で設計・実装することによって、世界最高レベルの性能を実現することに成功した。
開発にあたって、限定的な環境での検証ではなく、実運用に耐える管理システムとしての実地検証も行い、性能を検証した。例として、大量のデータを効率的な分析が求められる定点観測カメラを用いた人流解析のリアルタイムデータベース処理や時間がかかる業務系のバッチ処理、3次元モデルを利用した災害対策地理情報システム(GIS)アプリケーションなどで検証を行い、有効性を確認した。
アーリーアクセス版に続いて9月にオープンソース版を公開
NECおよびノーチラス・テクノロジーズでは、7月10日に劔のアーリーアクセス版を公開するとともに、劔のコミュニティサイトをオープンする。アーリーアクセス版は、劔のコミュニティサイトより申し込む。
また、コミュニティサイトでは、劔を活用するために必要となる情報として、更新情報や活用事例の紹介など、広く社会で活用されるための情報を公開するプラットフォームとして整備していく。
さらに9月下旬には、劔のオープンソース版を公開する。公開版はインストーラにとって自分自身でセットアップできるほか、検証を早く行えるようオープンプラットフォームのDockerでも各種情報を提供する予定。また一般公開版のリリースに合わせて、劔について解説した書籍も刊行する。