リンナイ(株)(本社:愛知県名古屋市、内藤弘康社長)は、九州大学大学院芸術工学研究院 講師 西村貴孝氏の研究グループとの共同研究によって、人間が日常的に入浴を繰り返すことで発汗機能や血管拡張機能が向上する可能性を明らかにした。
入浴を習慣化することにより、暑熱下での発汗量や血流量が増加することで、体表面からの熱放散機能が向上し熱中症や夏バテの予防に貢献することが示唆された。研究結果は、6月16日から18日に行われた日本生理人類学会第84回大会で発表された。
熱中症の対策には暑熱順化が有効であるとされている。暑熱順化は、暑さに慣れることで徐々に暑熱環境への耐性を得ることだが、近年では室内でのエアコンの普及や運動不足といった要因が人間の暑熱順化の獲得を妨げていると考えられる。
人為的に暑熱順化を獲得するには、人間にとって高強度の温熱負荷が必要とされているが、日本人は日常的に入浴という暑熱負荷を経験しており、日々の入浴は、発汗機能を高め、暑熱順化を促すと考えられている。
日常生活の入浴習慣がどの程度、暑熱環境への適応能に関与しているかは十分に明らかではないため、入浴中の発汗を含む体温調節機能を測定し、普段から浴槽に浸かる入浴習慣が体温調節機能の個人差に影響するか明らかにすることを目的とした。
健康な男性32名を対象に実験を行った。実験室の環境は室温28℃、湿度50%とし、浴槽の湯温は41℃に設定した。対象者は実験開始後10分間、浴室内で椅座位での安静をとり、その後浴槽へ移動し20分間の入浴を行った。その後、浴槽を出て、再度椅座位で15分間安静に過ごした。また対象者には入浴習慣に関するアンケートを行い、対象者ごとの入浴スタイルや入浴時間などを調査した。
「入浴習慣あり(浴槽に浸かるのが週4日以上)」12名と、「入浴習慣なし(浴槽に浸かるのが週4日未満)」20名において、発汗量と血流量をグラフ化した。グラフで示されたとおり、「入浴習慣あり」のグループにおいて発汗量が入浴中・出浴後に有意に大きく、血流量が早く上昇している(血管拡張が早い)ことがわかる。また、これらの結果は年齢や運動習慣、BMIの影響を考慮しても変わらなかった。
これらから、高強度の暑熱・運動負荷トレーニングをしなくても、日常的に入浴による暑熱曝露を繰り返すことで、熱放散機能が向上する可能性が示された。
共同研究者 九大大学院 西村講師のコメント:「近年、記録的な猛暑が続き、熱中症による死亡や病院搬送の増加が社会問題となっています。一方でコロナ禍等により、室内での生活が増え、運動不足の傾向も強まっており、暑熱順化の機会が少なくなっています。今回の研究により、家の中で行える入浴によって、運動を伴わなくても発汗・血管拡張等の熱放散機能が向上するという、当たり前のようですが客観的な結果が得られたことは意義深いと思います」