■研究のポイント□
○「信じている誤情報に対する訂正記事のクリックを選択的に避けるということはあるのか?」、「選択的に避ける傾向の強い人はどのような特徴があるのか?」という問いを検証した
○独自に考案した指標を用いてクリック行動を分析する実験を行った結果、参加者の43%に「信じている誤情報」に対する訂正記事へのクリックを選択的に避ける傾向があった
○この研究の結果は、誤情報を訂正する試みが広く行われているにもかかわらず、なぜ誤情報が拡散され続けるのかという問いに対し、新たな見方を提供する
名古屋工業大学大学院工学研究科の田中優子准教授らの研究グループは、誤情報に対する訂正の効果を制限するオンライン行動の特徴を明らかにした。
現在、多くのファクトチェック記事がオンライン経由でアクセスされており、ファクトチェック記事を共有するには、誤情報を信じている人がその記事をクリックする必要がある。
田中准教授ら研究では、このクリック行動に着目し、「信じている誤情報に対する訂正記事のクリックを選択的に避けるということはあるのか?」、もしあるとすれば「選択的に避ける傾向の強い人はどのような特徴があるのか?」という問いを検証した。その結果、43%の参加者は「信じている誤情報に対する訂正記事」へのクリックを選択的に避ける傾向があることが示された。
田中准教授らは、誤情報対策として、今後訂正情報を広く共有していくためには、この少なくない人々に見られる選択的回避というクリック行動の特徴を明らかにし、インターフェースデザインや介入方法につなげていくことが必要である。
この研究は、田中准教授をはじめ、東京学芸大の犬塚美輪准教授、理化学研究所革新知能統合研究センターの荒井ひろみユニットリーダー、名古屋大大学院情報学研究科の久木田水生准教授、東北大大学院情報科学研究科の乾健太郎教授(理化学研究所 革新知能統合研究センター チームリーダー)・髙橋容市特任研究員らが行った。
この成果は、4月19日に国際会議論文Proceedings of the 2023 CHI Conference on Human Factors in Computing Systemsに掲載された。