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〇コロナ禍初期に入学した高校2年生は他学年よりも孤独を感じる率が高い
〇孤独を感じている人は、深刻な心理的苦痛の有病率も高い
〇「高校2年生」「インターネット使用時間」「心理的苦痛」「月経前症候群重症度」が、孤独感の関連因子であることが判明
近畿大学東洋医学研究所(大阪府大阪狭山市)の武田 卓所長を中心とする研究チームは、コロナ禍でわが国の女子高校生の約30%が孤独を感じており、孤独感の因子として「高校2年生」「インターネット使用時間」「心理的苦痛」「月経前症候群重症度」の四つが関連していることを明らかにしました。
新型コロナウイルス感染症は、世界中の人々の身体面・心理面に大きな影響を及ぼしてきた。なかでも、感染予防による社会活動の制限によって、以前よりも孤独感が増していると想定される。孤独感は心理的な苦痛をもたらし、うつ病等の精神疾患のリスクを高め、高齢化社会や社会不適合と関連して世界的な問題となっている。パンデミック初期の調査からは、孤独感と自殺念慮との関連性が報告されており、深刻な心理的苦痛は自殺の明らかなリスクとなる。
特に、思春期女性は、子供から大人への移行期であり、ストレスに対して脆弱であることが知られている。コロナ禍での心理的ストレスについて、精神面への影響は注目されていなかったが、思春期女性での孤独感の実態とその関連因子はこれまで検討されていなかった。そこで本研究では、思春期女性における孤独感と心理的苦痛、月経前症候群症状、新型コロナウイルス感染症に対する恐怖感の関連について調査した。
新型コロナウイルス感染症オミクロン株による第5波に続き、第6波が起こり始めた令和3年(2021年)12月中旬、仙台市内の二つ高校の協力のもと、女子高校生1450人を対象として、心理的苦痛尺度、月経前症候群症状評価尺度、孤独感尺度、新型コロナウイルス恐怖尺度を評価する調査を実施。調査時には、高校では通常の対面授業が行われており、社会生活の大きな制限もなかった。
調査に回答し、かつ月経周期が規則正しい907人を解析したところ、次の3点が明らかとなった。
⑴29.0%が孤独であり、特に高校2年生が35.1%とより高率である。
⑵深刻な心理的苦痛の有病率が8.2%と高く、特に孤独群では16.0%と高率である。
⑶孤独感の関連因子として、「高校2年生」「インターネット使用時間」「心理的苦痛」「月経前症候群重症度」があげられる。
孤独の有病率が特に高率であった高校2年生は、コロナ禍初期の令和2年(2020年)4月に入学した学年であり、高校入学という社会的変化の大きな時期に緊急事態宣言等による休校が重なり、新たな人間関係形成がうまくいかず、その後も継続して孤独感を感じている可能性が考えられる。
思春期女性は特にストレスに対して脆弱であることを考えると、今回の調査で明らかとなった、高率の孤独感や心理的苦痛が持続していることに対して、医療従事者や学校保健関係者は特別な注意をはらう必要があるといえる。