経済産業省は、日本企業が経営課題解決や成長の加速に向けた選択肢の一つとして、対日M&A(外国企業又は海外プライベートエクイティファンド(PEファンド)による日本企業へのM&A)を活用する際に参考となる「対日M&A活用に関する事例集~海外資本を活用して、企業変革・経営改善・飛躍的成長につなげた日本企業のケーススタディ~」を取りまとめた。事例集では、海外資本を有効に活用した対日M&A20事例に加え、対日M&Aを実施した企業が直面していた課題、対日M&Aの留意点、メリットなどを掲載している。対日M&A案件に主点を充てた事例集は、同省として初めての試みとなっている。
近年、海外資本の活用方法の一つである対日M&Aの件数・金額は増加傾向にあり、複数の日本企業が、海外資本の持つグローバルネットワークやノウハウ等を活用して、経営の高度化や人材の強化・育成、海外販路の拡大などを実現している。
このような傾向に注目し、経産省は対日M&Aの効果意義を検証すべく、2022年9月「対日M&A課題と活用事例に関する研究会」を設置し、外国企業及び海外PEファンドによる対日M&Aとその後の経営及び事業展開について、対日M&Aとその後の経営及び事業展開について、対日M&Aを実施した企業が直面していた課題、対日M&Aの留意点、メリットなどを分析してきた。
その結果を踏まえ、日本企業が経営課題解決や成長の加速に向けた選択肢の一つとして、対日M&Aを活用する際に参考となる、日本企業向けの事例集を、経済安全保障等の観点も検討の上、取りまとめた。
事例集では、海外資本を有効活用し経営課題の解決や企業成長を実現した対日M&A20事例を選定。また、対日M&Aを行った企業が直面していた課題、経済安全保障等の観点を含む対日M&Aの留意点、メリットなどを掲載している。
掲載事例については、大企業だけでなく、地域の中堅中小企業の事業承継やスタートアップ企業も紹介している。また、企業規模や取引形態等を踏まえ、分かりやすく4パターン(子会社売却・事業譲渡(カーブアウト)、大企業本体の売却・資本の受入、オーナー企業の売却・資本の受入(事業承継等)、スタートアップ企業の売却・資本の受入))に分類している。
対日M&A案件に焦点を当てた事例集の作成は、経産省として初めての試み。対象会社の業種や地域、買い手の国籍等のバランスを考慮して、事業を選定しており、企業の協力を得て、全ての事例を実名掲載している。
また、企業が抱える課題や希望するメリットに応じて、事例の検索ができる索引付となっている。
さらに、課題解決の取組や成長過程を、従業員の生の声とともに記載。対日M&Aの良い面だけでなく具体的な苦労などにも触れることで、実践的な事例集となるよう工夫している。
経産省では、独立行政法人経済産業研究所(RIETI)とともに、事例集の概要説明や対日M&Aに関する講演、海外PEファンドによる事例紹介等を行う説明・報告会を5月17日にオンライン開催する。