2023年4月3日 Web使用者の「行動のきっかけ」 芝浦工大が企業と視線や脳波活用して解明

芝浦工業大学デザイン工学部デザイン工学科の吉武研究室、(株)オリエントコーポレーション(オリコ)、トッパン・フォームズ(株)は、視線計測と脳波計測を用いてWebサービスの認知とUI・UXに関する共同研究を実施し、ユーザーがサービスを利用する際、行動のきっかけとなる無意識のイメージ(メンタルモデル)が構築されやすいかどうかを分析する新手法を確立した。視線と脳波の計測結果とWeb利用のログ、専門家の診断結果を分析することにより「初心者には使いづらい」「初心者でも熟練者と同じように使える」の判断と「いつも使いづらい箇所」「たまに使いづらい箇所」などの発見・分類が、従来よりも短時間で可能になった。

 

さまざまなアプリの利用頻度

IT化が進んでDXが加速している現在、さまざまなWebやソフトウェア、アプリなどが日々登場して使用されている。それらは一度しか使わないものもあり、日に何度も使うものもみられる。製品・サービス、さらに利用者によって、利用回数と利用間隔・頻度はさまざま。

「メンタルモデル」は〝人や物、動物などに対して持っている無意識のイメージ〟を指す心理学用語。人間工学や人間中心設計では、〝何かの製品やサービスを利用する際の結果のイメージや心づもり〟などとしても使われるようになった。メンタルモデルが構築されると、どう行動すればいいのか分かるようになる。逆にメンタルモデルが構築されにくいとは、何回使っても覚えにくいということになる。

製品・サービスのユーザビリティが高いということの一つとして、「初めてでも迷わない」や「すぐに慣れる」ということがある。それは最初から、または早い段階でメンタルモデルが構築されるということになる。これまでメンタルモデルの構築状況は、利用時間や操作ミスの回数などで判断していた。

芝浦工大では、これまで視線計測装置を使ったメンタルモデル構築の研究を行ってきた。一方、トッパン・フォームズでは視線と簡易脳波計測装置を使って、研究や得意先の印刷物や WebなどのCX(カスタマーエクスペリエンス:顧客体験)改善を行っており、また、オリコでは会員サイトのUIUXの再構築を目指している。芝浦工大では、ユーザビリティに関する新しい着眼点を取り入れることで、さらなるCX向上にメンタルモデル構築の研究が有益と判断し、共同研究に参画した。

 

メンタルモデルの構築状況を計測

今回の研究は、メンタルモデルの構築状況をはじめ、構築の促進要因と阻害要因を把握することを目的としている。メンタルモデルの構築の促進要因と阻害要因を把握できれば、今後印刷物やWebに促進要因を盛り込み、阻害要因をなくすことで、メンタルモデルが早く構築できるようになる。具体的には、芝浦工大とトッパン・フォームズが保有する視線と簡易脳波計測装置で、オリコの会員サイト「eオリコ」上でのメンタルモデルの構築状況を計測した。

「eオリコ」で利用目的が異なる二つのパターンを想定し、各パターンで指定する箇所を複数確認するテストを設定。1テスト各5人合計10人の実験協力者に1人5回、時間を置いて同じテストを繰り返した。テストの内容を決める段階で「eオリコ」の中で〝分かりづらい〟と予想される操作を把握し、テストで迷うかを確認した。

視線計測では、2パターンとも、2~3回目で視線の移動距離が少なくなっていたことから操作する場所がイメージできていると判断でき、メンタルモデルが構築されたと判明しました。所要時間に関しても、視線の移動距離に比例していた。

また、メンタルモデルの構築の促進要因は視線の滞留が短く、阻害要因は視線の滞留が長かったり、注目したり操作すべき部分に視線がすぐにいかなかったりすることが明らかとなった。


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