2023年3月29日 第18回エコツーリズム大賞を決定

エコツーリズムを実践する地域や事業者の優れた取組を表彰する「エコツーリズム大賞」を平成17年度から実施している環境省は、第18回エコツーリズム大賞への応募があった19件を対象に、審査委員による審査を行い、合計8件の受賞を決め、同省で表彰式と受賞団体による取組発表を行った。

エコツーリズム大賞は、エコツーリズムに取り組む事業者、団体、自治体などを対象に、優れた取組を表彰し、広く紹介することで、全国のエコツーリズムに関する活動の質的・量的向上及び情報交換による関係者の連帯感の醸成を図ることを目的とした制度。環境省と一般社団法人日本エコツーリズム協会の共催により実施している。

【大賞】は、てしかがえこまち推進協議会及び一般社団法人摩周湖観光協会。【優秀賞】は認定特定非営利活動法人エバーラスティング・ネイチャー(小笠原海洋センター)、一般社団法人Switch Switch及び鳥浜漁業協同組合、公益財団法人トトロのふるさと基金、(株)ナチュラルブルー。【特別賞】は、京都一周トレイル会、日産自動車(株)。【パートナーシップ賞】は、東急(株)THE ROYAL EXPRESS及び北海道旅客鉄道(株)。

 

 【大賞】

てしかがえこまち推進協議会及び一般社団法人摩周湖観光協会(北海道)は、町民主体のまちづくり協議会として設立。2016年にエコツーリズム推進全体構想を策定し、国の認定を受けた。2020年に改訂を行い、硫黄山(アトサヌプリ)の噴気孔を特定自然観光資源に指定した。認定ガイド制度の仕組みを整備し、ツアーの開発・販売も行う。

従来からの資源保全と安全管理の取組と併せ、特定自然観光資源の指定を行い、人数制限とガイド認定制度の連携の仕組みを整備した。利用者に特別な体験を提供するための資源の活用と管理の先進事例として、他の模範となる仕組みづくりを行ったことが高く評価された。

 

 【優秀賞】

認定特定非営利活動法人エバ―ラスティング・ネイチャー(小笠原海洋センター)(東京都)は、小笠原諸島において、40年以上にわたりウミガメの産卵ふ化後調査、普及啓発プログラム等を実施する施設「小笠原海洋センター」において、放流会を観光客や島民向けに実施し、地域の環境学習、教育旅行の受入れを行っている。

野生生物の保全活動と併せて、ウミガメの卵の埋卵等の保全活動を体験プログラムとして企画実施し、参加者が能動的に保全活動に参加できるような工夫を行っている。観光客のニーズに対応する多種の普及啓発プログラムの企画開催だけでなく、それらのツアー収益の保全活動への還元や、地元小学校への教育活動も行うなど、地域のエコツーリズムに貢献している。

一般社団法人Switch Switch及び鳥浜漁業協同組合(福井県)は、福井県若狭町を拠点に、カフェの運営、地場産品の商品開発、自然を活用した体験事業を行う団体。三方五湖において、自然ガイド・漁業者・研究者と協働したカヤックツアーや、伝統漁法のツアーなどをはじめとした、地域活性化事業全般を実施している。

漁協と積極的に連携し、地域の伝統漁法を支えるとともに、食のツアーを通じて地域独自の食文化と自然の連関を参加者に伝えている。「ネイチャーポジティブ」な取組として、保全活動の実践などフィールドの再生にも貢献し、ツアーの収益や食品の売上の一部を地域の環境活動へ寄付するなどの活動も行っている。

公益財団法人トトロのふるさと基金(埼玉県)は、狭山丘陵において「ナショナル・トラスト活動」を行う団体。市民からの寄付等により、林地や湿地を買い取り「トトロの森」と名付け、保全管理と環境調査、保護と利用の促進による森の管理や、狭山丘陵の魅力を伝えるためのツアー・イベント等を開催し、普及啓発活動を行っている。

「ナショナル・トラスト活動」とエコツーリズムを組み合わせ、フィールドの保全と継承に長年努めている。管理作業に一般市民が参画しやすい仕組みづくりや、自然に親しみやすいツアー企画によって、来訪者や地域住民の双方が、地域のファンとして継続的に関わるための創意工夫あふれる取組を行っている。

(株)ナチュラルブルー(沖縄県)は、沖縄県にてダイビング・シュノーケルを主体とした海のエコツアー事業を実施。教育旅行や、子供向け、障がい者対応など幅広い顧客層に対応している。ダイビングインストラクター育成、指導者育成、多言語対応にも取り組む。

ダイビングショップとしてのエコツアー事業活動と並行して、海の環境教育、環境保全の社会貢献活動にも取り組んでいる。地域の高校生や子どもたちへのSDGsの普及啓発や、障がい者施設とのコラボレーションなど、多岐にわたる活動を通して地域コミュニティへの関与を積極的に行っている。

 

 【特別賞】

京都一周トレイル会(京都府)は、京都市内の行政や地域団体、交通事業者によるトレイルの管理活動を行う組織で、道標や案内板の設置、ガイドマップの販売、定期的なコースパトロール、コースの維持補修、PRに取り組む。スタンプラリーやフォトコンテストの開催、テレビ番組や雑誌、民間の実施するイベントへの協力、公認ガイド本の発行などを実施している。

ハード面の整備だけでなく、利用情報の提供やPR活動、公共交通を考慮したコース設定、ガイドマップの売り上げを維持補修に充当するなど、仕組みの整備にも力を入れている。長年にわたって多様な主体が協力して運営され、従来の京都観光とは別の切り口での楽しみ方を来訪者に提案している。

日産自動車(株)(神奈川県)は、2010年から100%電気自動車(EV)「日産リーフ」を販売し、阿蘇市、佐世保市と連携し、「EV優遇策」を実施し、PRをはじめ、優遇を簡易に受けられるツール開発を行っている。

エコツーリズムを推進する地域において、環境負荷の少ない移動手段としての電気自動車(EV)の社会実装のために、製造者として積極的に地域に関与している。また、利用者が簡易に優遇を受けるためのデジタル上の仕組みの整備も行い、来訪者への周知と利用促進に努めている。

 

 【パートナシップ賞】

東急(株)THE ROYAL EXPRESS及び北海道旅客鉄道(株)(東京都・北海道)は、鉄道で北海道を巡る「THE ROYAL EXPRESS~HOKKAIDO CRUISE TRAIN~」を2020年度より毎夏催行。2022年度から釧路川源流カヌー、知床五湖等でのガイドを伴う自然体験ツアーや、農場・牧場での食事、ステーションコンサートなどを企画実施している。

鉄道会社と地域のエコツアーガイドが連携することで、高付加価値な商品の企画実施を実現した。列車のクルーによるエンターテインメント性の高い解説や、鉄道旅行ならではの景観の提供などの工夫がされている。鉄道の維持に課題の多い北海道において、社会的に意義のある取組を行っている。


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