早稲田大学スポーツ科学学術院の筒井俊春助教と同学術院の鳥居 俊教授は、腰椎の疲労骨折が12〜14歳の青年期サッカー選手の約25%に生じていることを特定し、危険因子には、無症候性の骨髄浮腫、腰椎アライメント(配列)不良、未成熟な腰椎、ハムストリングスのタイトネス(筋の硬さ)が関連することを初めて解明した。腰椎疲労骨折の発症要因を明らかにできたことで、予防プログラム作成に貢献することが期待され、さらには青年期のスポーツ選手が自身の身体を意識し、けがを減らすことに繋がる可能性もでてきた。
腰椎分離症、一般人の5倍
疲労骨折の一つである腰椎分離症は、骨強度が不十分な青年期アスリートに起こりやすいスポーツ障害とされており、一般人の2~5倍の有病率を示すなど、発症リスクの高い障害に分類される。また、競技復帰までに時間を要するスポーツ障害に分類されるともいわれており、予防の重要性が唱えられてきた。
腰椎分離症と診断された患者のデータを分析した研究によると、腰椎分離症の患者は大腿四頭筋やハムストリングスなど下肢の筋タイトネスが高く、脊柱のアライメント不良を有しているということが明らかになっていた。しかしながら、上記のような特徴を有する青年期アスリートが、腰椎分離症を発症しやすいのかどうかは不明だった。腰椎分離症や腰椎疲労骨折の発見・診断にはMRIやCTなどの画像評価が必須で、病院を受診した選手以外のデータ収集には高いハードルがあった。
筒井助教らが6ヵ月おきに合計2回、1年間の追跡を実施した結果、26.2%の青年期サッカー選手に腰椎疲労骨折の発症が認められた。また、発症に関連した要因には、無症候性の骨髄浮腫を有していることや、骨成熟が3段階に分かれる骨成熟ステージのうち、2番目に該当する成熟段階であること、腰椎前弯に対して仙骨が前傾していること、ハムストリングスが硬いことが挙げられた。
この調査結果を受けて、研究グループでは、第一に、青年期アスリートの約4分の1が腰椎疲労骨折を発症していることを、監督やコーチ、アスレティックトレーナーが認識しておく必要があると指摘。また、研究の結果から、腰椎分離症の予防を目指す上で焦点を当てるべきポイントが明らかになった。特に修正可能なファクターに着目すると、①過度に仙骨が前傾していないか(腰椎前弯と仙骨前傾の具合が同程度か)、②ハムストリングスのタイトネスがないか、をスポーツ現場で評価・モニタリングすることが重要であるとしている。