北海道大学人獣共通感染症国際共同研究所の五十嵐学准教授、ボン大学の塚本雄太研究員、加藤博己教授らの国際共同研究グループは、インフルエンザウイルスの複製に必須の宿主因子を同定し、インフルエンザの新たな治療標的を見出した。宿主因子とは、ウイルス複製に関与する宿主細胞由来のタンパク質のこと。
現在、わが国では抗インフルエンザウイルス薬として、7種類の抗インフルエンザウイルス薬が認可されている。しかし、これらの薬剤は特定のウイルスタンパク質に直接作用するため、ウイルス遺伝子の変異で薬剤耐性ウイルスが出現する弱点がある。
今回、研究グループは、インフルエンザウイルスの複製に宿主細胞のRNAメチル基転移酵素MTr1が不可欠であることを明らかにした。また、計算機を活用した既存薬ライブラリーのスクリーニングによりMTr1阻害化合物を同定し、宿主因子であるMTr1の機能を阻害することでインフルエンザウイルスの複製を特異的に抑制できることを示した。
今後MTr1を標的とした、薬剤耐性ウイルスが出現しない、新たな抗インフルエンザウイルス薬開発への展開が期待される。
この研究成果は、2月9日公開のサイエンス誌にオンライン掲載された。