東北大学多元物質科学研究所は、㈱深松組(所在地:仙台市)と仙台reborn㈱(仙台市)、仙台市集団移転跡地利活用事業等の一環として昨年4月にオープンした「アクアイグニス仙台」内の農業ハウスに栽培用自然エネルギー利用熱源システムを開発・導入し、実証試験を開始した。アクアイグニス仙台に設置した太陽熱集熱器と、太陽熱を恒温熱源化することができる凝固層剥ぎ取り型潜熱蓄熱システムを組み合わせ、新システムの開発を行いました。化石燃料に依存しないカーボンニュートラル型の施設園芸が期待できる世界初の試みとなる。
「アクアイグニス仙台」は、仙台市集団移転跡地利活用事業、宮城県沿岸部交流人口拡大モデル施設整備事業として、2022年4月にオープン。地下1000mの大深度から湧出する「温泉」や地元の農産物を販売する「マルシェ」をはじめ、東北初出店となる猿田彦珈琲の「カフェ」、第一線で活躍するシェフ監修の「レストラン」「パティスリー・ショコラトリー」「ベーカリー」を取り揃え、訪れる人々の心を癒す、食と人が交わる極上の空間を目指している。
アクアイグニス仙台は、省エネ性やCO₂排出量の削減に寄与することを目的としており、地中熱・温泉排熱・ボイラ廃熱・浴槽排気熱から熱を回収し,各設備で利用するシステムを構築・導入している。
そのなかで、敷地内の「農業ハウス」では、太陽熱エネルギーの利用を検討してきたが、変動熱源である太陽熱を効率よく安定熱源に平準化することは従来のシステムでは難しいのが状況。そこで蓄熱密度に優れた「潜熱蓄熱式平準化システム」に着目したが、従来型の潜熱蓄熱システムでは蓄熱した熱を放出する際、伝熱壁表面で潜熱蓄熱材が凝固し伝熱面が固相で覆われるため、著しく伝熱速度が低下するという問題を抱えていた。
同事業では、潜熱蓄熱材に蓄熱した熱を高速かつ安定して放熱できる 「凝固層剥ぎ取り型潜熱蓄熱」システムと、冬場でも効率の良い集熱が可能な「ヒートパイプ式太陽集熱パネル」を用いた集熱システムを組み合わせた栽培用自然エネルギー利用熱源システムを開発。冬季の夜間などの暖房が必要な時に、潜熱蓄熱材から熱を取り出し、培地に常時熱を供給することが可能となる。
運転に際しては、様々な条件を考慮し、太陽熱を集熱できない場合でも、温泉排熱を利用するなどバックアップを図る。同システムを利用した農業ハウスでは、イチゴ栽培を予定しており、収穫後はアクアイグニス仙台内のマルシェやレストランで提供予定。