このほど、「2017 日本ストックホルム青少年水大賞(日本代表選考会)」の各賞が決定した。大賞は、リン酸マグネシウムアンモニウム(MAP)を活用した革新的な堤防維持管理技術を開発した京都府立桂高等学校の地球を守る新技術の開発研究班が受賞した。また、審査部会特別賞は、カワニナを通して考える地域の生態系という研究に取り組んだ岐阜県立岐山高等学校の生物部カワニナ班が受賞することとなった。
この取り組みは、生活の質の向上と水環境における生態系の改善に資する優れたプロジェクト(調査研究)を行った高校生を対象としたもの。大賞受賞者は、今年の夏にスウェーデンのストックホルムで開催される予定の国際コンテスト「Stockholm Junior Water Prize」に日本代表として参加することとなる。
大賞を受賞した桂高校の取り組み
全国の下水処理場で汚泥や汚水から生成され始めているMAPは、リン含有率の高い副産物である。そのため、肥料原料として輸入されているリン鉱石に代わるリン資源として注目されてきたが、いまだ十分には活用されていない。2014年には廃棄物処理法が改正され、MAPは許可を受けることで肥料としての販売と利用が可能となったが、現場での利用はほとんど進んでいない。
大賞を受賞した桂高校は、MAPの生成時に添加される塩化マグネシウムの雑草種子への発芽抑制作用とノシバの生育促進に注目し、この下水副産物の活用法を主にノシバを材料として検討した。その結果では、校内の試験ほ場だけではなく、東日本大震災で影響を受けた鳴瀬川堤防の現地試験でも濃度を変えることで雑草の発芽抑制とノシバの生長促進という相反する作用が両立することを明解に示された。
現時点では、河川堤防におけるノシバでの成果に限られているが、この材料は、世界的にみると多様な農業用肥料、緑化資材としても活用できると考えられる。こうした下水処理副産物の農業と緑化への活用が、廃棄物の活用として世界的にも重要な発見として高く評価され、今回、日本ストックホルム青少年水大賞を受賞することとなった。
地道な取り組みを高く評価
審査部会特別賞を受賞した岐山高校の取り組みについては、琵琶湖固有種のタテヒダカワニナの琵琶湖以外への放流という事実を、地道にデータを積み重ねていき、科学的に解明し放流中止に間接的に関与したことが大きな成果として取り上げられた。また、審査では、形態とDNAの両面から同定している点について、「高校生としてはとても素晴らしい」と評価された。
さらに、岐阜市の行政との話し合いを根気よく進めたことも高く評価されている。審査部会は、「一般には、人々が好むホタルを増やすことは、人々の自然に対する意識を高める好ましい活動だと勘違いされています。このような考え方を改善することは困難です。生物多様性という言葉は知られていても、その概念は理解されていないからです。よく辛抱強く取り組んだ素晴らしい活動です」と称賛している。さらに、「琵琶湖周辺の流通や地域開発は、日本の中でも長い歴史を持ち、岐阜県もその影響下にあったと思われます。自然生態系と人間活動の歴史についても検討され、研究がさらに発展することが期待されます」とコメントしている。