国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)はグリーンイノベーション基金事業の一環として、「2050年カーボンニュートラル」の実現を目指し、食料・農林水産分野における二酸化炭素(CO2)などの吸収源対策を一層強化するため、「食料・農林水産業のCO2等削減・吸収技術の開発」プロジェクト(予算総額159.2億円)に着手する。
本プロジェクトでは、「有用微生物の機能を付与した高機能バイオ炭(米のもみ殻、剪定枝などの炭化物)による農地炭素貯留と農作物の収量増・環境価値向上の実現」、「高層木造建築物などに使用可能な等方性大断面部材の普及による国産材需要拡大と森林におけるCO2吸収量の増加」、「藻場の回復・造成促進を目的とした海藻バンク整備による水産資源の維持・増大とCO2吸収源の確保」の実現を目指して研究開発・実証を行う。
NEDOは本事業を通じて、農林水産物を利用したCO2の吸収・削減技術開発を加速させ、カーボンニュートラル実現に貢献するとともに、日本の農林水産業の国際競争力を強化し、将来の成長産業の創出を目指す。
日本政府は2020年10月「2050年カーボンニュートラル」を宣言し、2050年までに温室効果ガス(GHG)の排出を全体としてゼロにする目標を掲げた。この目標は、従来の政府方針を大幅に前倒しするもので、実現するには、エネルギー・産業部門の構造転換や、大胆な投資によるイノベーションといった現行の取り組みを大幅に加速させることが必要。このため、経済産業省はNEDOに総額2兆円の基金を造成し、官民で野心的かつ具体的な目標を共有した上で、これに経営課題として取り組む企業などを研究開発・実証から社会実装まで10年間継続して支援するグリーンイノベーション基金事業を立ち上げた。
NEDOは本基金事業の取り組みや関連技術の動向などをわかりやすく伝えていくことを目指し、「グリーンイノベーション基金事業 特設サイト」を公開している。
この基金事業は、グリーン成長戦略で実行計画を策定している重点分野を支援対象としており、その一つが「食料・農林水産業」。
農地や森林などが吸収・固定するGHGは、年間4450万トン(2020年度)にも達することから、食料・農林水産分野における2050年カーボンニュートラルの実現に向け、これらの吸収源対策を一層強化することが求められている。また、農地土壌や森林に続くCO2吸収源として、海洋生態系が吸収する炭素であるブルーカーボンについても、国際的な関心が集まっている。
そこで本プロジェクトでは、農林水産業に期待されるCO2の吸収・固定技術を中心に、将来の成長産業の創出につながるインパクトの大きな課題を対象として、これまでの発想や技術的な限界を打ち破るような野心的な研究開発を重点的に推進することを目的としている。
高機能バイオ炭など3テーマ採択
こうした背景の下、NEDOは農林水産省が策定した研究開発・社会実装計画に基づき、「食料・農林水産業のCO2等削減・吸収技術の開発」プロジェクトの公募を行い、1)高機能バイオ炭等の供給・利用技術の確立、2)高層建築物等の木造化に資する等方性大断面部材の開発、3)ブルーカーボンを推進するための海藻バンク整備技術の開発―の合計3テーマを採択した。
食料・農林水産分野における2050年カーボンニュートラルの実現に向け、農地や森林、海洋生態系などの吸収源対策を一層強化するため、バイオ炭による農地炭素貯留、高層木造建築物の拡大、海藻類によるCO2 固定化(ブルーカーボン)などの技術に関する研究開発・実証に取り組む。