2023年1月16日 【九大】局所⿇酔薬の安全な最⼤使⽤量を⽰す新ルールを提案 ⼩児の⻭科治療・⼝腔外科⼿術の安全性向上に期待

局所⿇酔薬中毒の発症は⾎中濃度と関連するため、⿇酔薬の使⽤量が上限量を超えなければそのリスクは軽減する。特に、⼩児⻭科治療の局所⿇酔薬について、患者ごとの使⽤上限量を簡便に算出できる基準がないため、局所⿇酔薬中毒による重⼤な医療事故が⽣じている。

こうした現状を受けて、九州⼤学⼤学院⻭学研究院の⼀杉岳講師と、東京⼥⼦医科⼤学⻭科⼝腔外科佐々⽊亮講師らは、世界中の⿇酔薬の最⼤推奨⽤量に準ずる基準を⾒直し、⽇本の⼩児⻭科治療に適した局所⿇酔薬の安全な最⼤推奨⽤量(MRD)を⿇酔薬の種類を問わず簡単に求められる〝体重6㎏ごとに⻭科⿇酔薬の注射を半分ずつ増やす〟ルール、HC/6ルール(Half Cartridge/6㎏ルール)を新たに提案した。

今回提案したルールは、安全な⼩児⻭科治療中の事故防⽌及び予防に役⽴ち、また⻭科医師側の不安も軽減することが期待される。

この研究成果は⽇本⻭科⿇酔学会雑誌に1⽉15⽇に掲載された。

MRD、歯科医の7割が知らない

⻭科治療に局所⿇酔薬は不可⽋だが、局所⿇酔薬には代表的な副作⽤としてアレルギーと局所⿇酔中毒がある。ここ数年、局所⿇酔薬の改善によりアレルギーは減少しているが、⼩児の重⼤な医療事故につながる局所⿇酔薬中毒は未だに多数報告されている。局所⿇酔中毒は過量投与等で⽣じるが、原因の⼀つとして⼩児における使⽤量の上限が明確にされていないため、統⼀基準がなく、世界においては幾つものルールが乱⽴していることが挙げられる。

このような状況が、臨床現場での医療者の混乱と無関⼼に繋がっていると考えられ、海外の報告によると、約7割の⻭科医師は診療時に局所⿇酔の最⼤使⽤量を意識しておらず、⼩児⻭科専⾨医と⼀般⻭科医を対象とした調査では、回答者の7割近くがMRDを知らず、87%がその計算⽅法を認識していなかった。

MRDを認識していないということは、過量投与から局所⿇酔中毒を⽣じる危険性を認識していないとも考えられる。⽇本⻭科⿇酔学会では「安全な⻭科局所⿇酔に関するステートメント」で、⻭科⽤局所麻酔剤のMRDを提⽰してきた。

しかし、MRDの計算は煩雑であるため、⻭科医師が⼩児の治療時に際してMRDを遵守することを期待するだけでは不⼗分だの指摘があり、今回、一杉講師らは、⼩児⻭科治療の局所⿇酔薬の使⽤量について安全かつ簡便なルールを新たに提案した。このルールが広まることで⻭科医療の安全性の向上が期待される。

 


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