2023年1月13日 【東京医歯大】東京2020夏季五輪出場選手の肉離れの発生率と成績を調査 筋損傷が腱実質部に至るか至らないかが競技結果に影響

■ポイント□

東京2020夏季五輪の出場選手に59件のMRIで診断された肉離れ発生

〇筋損傷が腱実質部に至らない選手と比較して、腱実質部に至った選手では競技を最後まで完遂出来ない割合が高いことが分かった

〇この研究結果は肉離れが発生した際にその選手が大会期間中に復帰できるかの判断基準の助けになる

 

東京医科歯科大学大学院医歯学総合研究科運動器外科学分野の古賀英之教授の研究グループは、獨協医科大学埼玉医療センター(片桐洋樹講師)、ブリティッシュコロンビア大学、オスロスポーツトラウマリサーチセンターとの共同研究で、東京2020夏季オリンピック出場選手での肉離れの発生率を示し、筋損傷が腱実質部に至るか至らないが競技結果に影響することをつきとめた。

オリンピックは、200カ国以上から多様な競技に1万人を超える選手が参加する世界最大のスポーツイベント。五輪開催を担当する国際オリンピック委員会はアスリートの健康を促進することを使命としている。このため、2012年ロンドン大会以降、五輪でのスポーツ外傷の発生率を継続的に発表している。

スポーツ外傷には多様な種類があるが、特に肉離れは最も多くみられる外傷で、選手のパフォーマンスを低下させ、スポーツ活動を休止させる。一方、肉離れに関するデータがロンドン大会以降、報告されてきたが、発生率を統計学的に検討することや、筋損傷の程度と競技結果の関係を調べることはこれまで行われてなかった。これらを調べることは選手と医療スタッフが傷害予防を考える際や肉離れ後の競技復帰を進める際の助けとなる。

そこで、研究グループは、東京2020夏季五輪に参加した選手の磁気共鳴画像法(MRI)で検出された肉離れの発生率、競技別ならびに損傷部位の詳細な情報、さらに肉離れの程度と競技結果の関係を明らかにすることを目的に研究を行った。

東京五輪は0.52%が肉離れに

東京2020夏季五輪に参加した1万1315名の選手のうち59名(0.52%)がMRIで肉離れと診断された。このうち男性が40名(0.68%)、女性が19名(0.35%)で、男性の発生率の方が高かったことが分かった。競技別では陸上が30名と最多で、フィールドホッケー6名、ハンドボール、フットボール各3名と続いた。

肉離れ発生部位は、大腿二頭筋が最も多く24例で、半膜様筋7例、大腿直筋5例。特に短距離走者では17例、全てが下肢ハムストリング・膝屈曲筋に発生していた。

肉離れの程度については英国陸上競技筋肉損傷分類に基づいて評価した。Type A 筋膜型が21例、Type B 筋腱移行部型が14例、Type C 腱実質部を含むものが24例にのぼった。

Type a損傷を負った選手のうち、76%にあたる16名の選手は最後まで競技に出続けた。5名は棄権などで競技を最後まで行えなかった。Type B 筋腱移行部型損傷を負った選手では1名を除く13名(93%)が最後まで競技を続けた。

腱実質部を含む損傷を負った選手では最後まで競技を行えたのは25%にあたる6名で、75%の選手は棄権などで競技に不参加あるいは中断。競技を棄権あるいは途中で止めるリスクは腱実質部に至る損傷を受けた選手で有意に高いことが分かった。


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