■ポイント□
〇〝棲み分け〟は自然界に広く見られる現象で、同一の資源(餌や住処など)を巡る競争を緩和し、近接空間での複数生物種の共存を可能にすると考えられている
〇農業害虫タバココナジラミでは、その体内に生息する2種類の共生細菌が、昆虫の同一細胞内で、別々の極小区画に棲み分けをしていることを発見
〇細菌が同一細胞内で棲み分けるという現象は、これまでに全く報告されていない。この成果は、微生物の生態や、共生の進化の理解に新たな観点を提示するもの
富山大学学術研究部 理学系の土`田 努准教授と群馬大学食健康科学教育研究センターの藤原亜希子講師(理化学研究所環境資源科学研究センター客員研究員を兼務)ら研究グループは、農業害虫として知られるタバココナジラミと縁種では、虫の生存・繁殖に必須の役割を担う2種類の共生細菌が、コナジラミ体内の同一細胞内という極小空間で〝棲み分け〟を行っていることを発見した。
多くの昆虫は体内に生存や繁殖の役割を担う必須の共生細菌を複数種棲まわせていることが知られている。しかし、これらの細菌は昆虫の別々の細胞や組織に収納されているのが一般的で、同一細胞内での棲み分けという現象は従来まったく知られていなかった。
今回の発見は、微生物の生態や共生の進化の理解に新たな観点を提示するもので、研究成果は米国の学術誌「Microbiology Spectrum」に掲載された。
この研究は、産業技術総合研究所生物プロセス研究部門の鎌形洋一研究部門長(現 生命工学領域長補佐)孟憲英専門技術員と共同で行われた。