全世界で猛威を奮っている新型コロナウイルス感染症(COVID-19)は、発生から3年近くが経過した現在も完全な収束は見通せない状況にある。一方で、COVID-19の病原体である新型コロナウイルスは、感染者の一部が排泄物中にウイルスを排出することから、下水調査によりCOVID-19流行情報を取得しようとする取り組みが全世界で行われてきた。しかしながら、下水調査により得られた新型コロナウイルスに関する情報(下水情報)が本当に社会にとって意味のある形で活用されている例は、全世界を見渡しても限られているのが現状。
COVID‐19に関わる下水情報には、下水中ウイルス濃度やウイルス遺伝子配列などが存在しますが、これらの下水情報を自治体が持続可能な形で活用していくためには、下水情報活用に関するコンサルティングを行う環境整備が必要不可欠となる。
東北大学大学院工学研究科は、これまで下水情報を活用して、COVID-19の陽性者数予測やノロウイルス感染症の流行検出を実施してきた。この度、東北大大学院工学研究科と仙台市は、東北大と仙台市による包括連携協定のもと、さらなる連携を図るため「下水情報取得及び活用の調査研究に関する覚書」を締結し、さまざまな疾病に対して適応可能な社会の実現を目指すことで同意した。
さらに、この覚書を基盤とし、下水情報のさらなる活用を実現するために、東北大学工学研究科下水情報研究センターを設立する。センターの主な役割は、下水情報を活用しようとする自治体向けのコンサルティング。センターでは、下水情報の活用を検討している自治体からの依頼のもと、下水情報ニーズ調査に基づく下水調査内容の提案、下水調査結果の分析、及び下水分析に興味を持つ分析会社への下水分析方法解説資料の提供等を行う。