筑波大学は7日、長い期間にわたってテレワークを行う人は、日常的に運動不足であるにも関わらず、そのことへの危機感が低い傾向にあるという研究結果をまとめた。今後も長期間テレワークする人の増加が見込まれる中、同大学は「日常的な移動や運動習慣の支援と、それに適した都市づくりが重要になる」としている。
新型コロナウイルス感染症の流行によってテレワークを行う人が急増した。リモートで働く人の中では、通勤する機会が減ったことで、1日の歩数が減ったケースも多い。そこで筑波大学は、こうした働き方の変化によって労働者の身体活動量がどう変わったのか、活動のリモート化が運動不足にどういった影響を与えているのかなどについて調査を行った。
今回の研究では、国土交通省が2020年8月にインターネットを通じて行った「新型コロナ生活行動調査」を活用。全国の就業している18歳以上4484人を対象に、新型コロナ流行前、第1回緊急事態宣言中(2020年4月16日~5月13日)、その解除後の3つの時期の平日の生活行動を15分単位で調べた。そして、対象者を3つの時期の働き方の変化をもとに、
① 通勤 → 通勤 → 通勤
② 通勤 → テレワーク → 通勤
③ 通勤 → テレワーク → テレワーク
④ テレワーク → テレワーク → テレワーク
‐の4グループに分け、移動による身体活動量を比較した。なお、働き方の変化の影響と新型コロナウイルス感染症の影響を区別するために、通勤のための移動とそれ以外(例えば買い物など)の移動は分けて考えられている。
その結果、通勤をしている人は、平均で合計約4.5METs×h(※)を通勤から得ていた。それ以外の移動では平均で合計約0.8METs×hしか得ておらず、移動による身体活動量のほとんどが通勤によって賄われていたことが分かった。一方、テレワークをしている人は、通勤以外の移動による身体活動量が通勤している人より多かった(平均で合計約1.0METs×h)ものの、全体の身体活動量は著しく低い結果となった。この傾向は特に若い人や女性で顕著に見られている。
さらに、それぞれのグループで活動のリモート化がもたらす運動不足への危機意識を尋ねた質問の回答も集計した。それによると、緊急事態宣言中にテレワークを始め、解除後も継続している人たちのグループは、活動のリモート化による運動不足を最も危惧しており、移動による身体活動量が減少した半面、運動などを行う時間を増やしていた。一方、新型コロナ流行前からテレワークを行い続けているグループは、移動による身体活動量が最も少なく、スポーツなどをする時間も短いうえに活動のリモート化による運動不足への危機意識が最も低いことが分かった。つまり、テレワークへの突然の転換は運動不足への危機感を一時的に高めるが、テレワークを長期間続けると、日常的に運動不足であるにも関わらず、それに対する危機意識が低下していく可能性があるとしている。
※ METs×h
METs(メッツ)は安静に座っている状態を1METとして、様々な活動がその何倍のエネルギーを消費するか示した活動強度の指標。厚生労働省は、メタボリックシンドローム予防のために「3METs以上の身体活動を1週間に23METs× 運動時間(h)行う」よう提唱している。