広島大学大学院医系科学研究科生理機能情報科学の宮﨑充功准教授などの研究グループは、冬眠期のツキノワグマ骨格筋は、省エネモードに入ることで栄養素としての筋タンパク質の分解を抑えることにより、〝不活動でも衰えない筋肉〟となることを明らかにした。冬眠期のツキノワグマの筋肉を活動期と比較したところ、長期間の絶食・不活動にもかかわらず、冬眠中でも筋肉が全く衰えていないことを確認。冬眠中のクマの筋肉細胞では、筋肉を構成するタンパク質の合成・分解の制御系の両者ともに顕著に抑制される「省エネモード」にあることを明らかにした。
筋肉内の有酸素系エネルギー代謝を制御するミトコンドリア関連制御因子の遺伝子発現や酵素活性も、冬眠期の筋肉では顕著に抑制されていることも判明。これらの成果は、長期間の不活動・栄養不良を経験し、それでもなお筋肉や運動機能が衰えないという冬眠動物の特徴を説明するものであり、将来的にはヒトの寝たきり防止や効果的なリハビリテーション手法の開発につながることが期待される。
この研究成果は、宮崎准教授と、北海道大大学院獣医学研究院環境獣医科学分野野生動物学教室の下鶴倫人准教授・坪田敏男教授、神奈川大人間科学部の北岡祐准教授、東京大大学院総合文化研究科広域科学専攻生命環境科学系身体運動科学研究室の高橋謙也助教らの研究グループとの共同研究によるもの。
この研究成果は、アメリカ東部標準時11月16日午後2時(日本標準時17日午前2時)、米国オンライン科学誌「Scientific Reports」に掲載された。