スーパーコンピューターの計算速度の世界ランキング「TOP500」が11月15日に米テキサス州ダラスで開かれた国際会議で発表され、米国オークリッジ国立研究所の『フロンティア』が前回5月に続きトップとなった。同機は前回、史上初めて毎秒100京回(京は1兆の1万倍)を意味する「エクサ級」を達成した。わが国トップの理化学研究所の『富岳』は2位を守った。
TOP500は性能評価用プログラムの処理速度を年2回競っている。11月の発表では、米エネルギー省がクレイ社などと開発したフロンティアが毎秒110京2000兆回で、2位の富岳は44京2010兆回で続いている。3位も前回と同じ欧州高性能計算共同事業体がフィンランドに設置している「ルミ」。同機はシステムを拡大し速度が倍増の30京9100兆回とした。
上位500台の内訳は、中国が最多の162台。これに米国127回、ドイツ34台、日本31台、フランス24台が続いている。TOP500への申請がないものの、中国がすでに複数のエクサ級スパコンを開発済みともいわれている。
日本は先代「京」が2011年に連覇した後、中国や米国に抜かれた。2020年6月に富岳で8年半ぶりに首位となり、昨年11月まで4連覇した。
TOP500と同時に発表された産業利用に適した計算の速度を競う「HPCG」と、グラフ解析の性能を競う「Graph500」では、富岳は6期連続の1位を達成した。人工知能(AI)の深層学習に用いられる演算の指標「HPL‐AI」は3位だった。
富岳は理研と富士通が共同開発した。神戸市の理研計算科学研究センターの京跡地に設置され、2020年4月からの試験利用を経て昨年3月に本格稼働した。文部科学省「成果創出加速プログラム」のほか、一般公募や国の重要課題での利用が進んでいる。
理研は今後、従来型のスパコンと、物質を構成する原子や電子などの「量子」の性質を利用した未来の「量子コンピューター」を組み合わせる研究開発を強化するという。今年8月からは文科省の委託を受け、富岳の後継機実現に向け、求められる性能や機能の調査研究に着手している。
理研計算科学研究センターの松岡 聡センター長は「富岳は世界トップ級の総合的な実力を示した。SDGsやSociety5.0を実現し、さまざまな問題を解決するため、幅広い高性能を容易に実現できる。設計思想は正しかった。経験を活かし、次世代の高性能計算に向けた研究開発を目指す」とコメントしている。