群馬県吾妻郡中之条町に在住する高齢者を対象に、乳製品の摂取頻度と高血圧発症リスクを調査していた(株)ヤクルト本社と、東京都健康長寿医療センター研究所社会参加と地域保健研究チームは、乳酸菌ラクトバチルス カゼイ シロタ株を含む乳製品の週3回以上にわたる習慣的摂取が高齢者の高血圧発症リスクの低下に繋がることが示唆されたとの研究成果を発表した。
同社の主力製品の「ヤクルト」に含まれるL・カゼイ・シロタ株は、これまで多くの臨床試験が実施され、腸内菌の改善、感染予防、がん再発予防などが報告されている。また、疫学調査により、L・カゼイ・シロタ株を含む乳製品の摂取による膀胱がんや乳がんの発症抑制効果が報告されたが、その他の疾病に対する疫学的な予防効果については研究が続けられている。
高血圧症は世界的に広く認められる疾患。特に日本においては成人の人口1億人あたり4300万人が高血圧症との報告もある。一般に高血圧症自体の自覚症状はないが、虚血性心疾患、脳卒中、末梢血管疾患、視力喪失、慢性腎不全といった疾患を引き起こすことが知られており、疾患の予防は健康の維持、増進に重要と考えられる。
東京都健康長寿医療センター研究所の社会参加と地域保健研究チームは、2000年から中之条町において「高齢者の日常的な身体活動と心身の健康に関する疫学調査(中之条研究)」を実施しており、身体活動量が多いほど、メタボリックシンドローム、動脈硬化、加齢性筋肉減少症、骨粗しょう症などの疾病リスクが低下することを明らかにし、これらのデータは中之条町や他の自治体の運動目標値の設定に活用されている。
今回の調査研究は、中之条町に在住する65歳から93歳の高齢者352名を対象に、過去5年間のヤクルトなどの乳製品の摂取頻度と高血圧発症の関係を調べた。高齢者の内訳は男性125名、女性227名で、5年前までに高血圧症を発症していない人を対象とした。高血圧症の判定は、安静時の上(収縮期血圧)が140以上、下(拡張期血圧)が90以上の人や高血圧症の診断を受けた人、降圧剤を処方されている人とした。
栄養士による聞き取り調査などの結果、乳製品を週3回以上摂取した人の過去5年間の発症率は6.1%で、摂取が週3回に満たない人々の発症率14.2%に比べ、明らかに値が低くなっていた。
生活習慣病への効果を実証
高齢者人口の増加に伴い、高血圧症を発症する人はますます増加する傾向にあり、抗高血圧効果を有する乳酸菌やそれらを利用した食費へのニーズは高まっている。乳製品のさまざまな病状に働きかける詳細なメカニズムの解明が進み、ニーズに応える形で健康の維持・増進に役立てられることが期待される。
今後は、乳製品の摂取と高血圧以外の疾病の発症との関係についての調査研究が期待される。ヤクルト本社では「今回、新たに高齢者の高血圧発症リスク低減に役立つことが明らかになったことで、乳酸菌の生活習慣病に対する効果をより確かなものにすることができた」とコメントしている。