■ポイント□
〇2020年冬から2022年夏にかけて、全世界での新型コロナ致死率は96.8%低下
〇2020年冬から2022年夏にかけて、日本での新型コロナ致死率は98.4%低下
〇新型コロナ致死率は季節性インフルエンザによる致死率に近づいている
横浜市立大学附属病院化学療法センター 堀田信之センター長らの研究グループは、米国ジョンズ・ホプキンス大学提供のデータを解析し、新型コロナによる感染者の致死率がパンデミック初頭と比較して、30分の1以下に低下したことを明らかにした。この結果は、ワクチン接種の広がりや治療の効果、感染による免疫獲得、ウィルス自体の弱毒化の複合的な効果と推測される。研究成果は、ウィルス専門医学誌「Journal of Medical Virology」の10月17日オンライン版に掲載された。
新型コロナ感染症は、2020年冬のパンデミック初頭は致死率の高い難治性感染症として恐れられていた。その後、致死率の低下が指摘されていたが、2年半にわたる世界全体の致死率のデータ解析は行われていなかった。
研究では、ジョンズ・ホプキンス大学から、2020年1月26日から2022年8月21日までの週間新規発症数と死亡数の提供を受け、診断から死亡までのタイムラグを考慮した上で、致死率(感染者のうちの死亡者の割合)を算出した。
〝1週間の死亡数〟を〝2週間前の新規発症数〟で割った値として致死率を算出し、対数変換した後、線形回帰モデルを適用した。全世界のデータに加えて、人口上位11カ国のデータも合わせて分析した。
分析の結果、世界の新型コロナによる致死率は、2020年2月の8.5%から2022年8月の0.27%まで低下したことがわかった。2.5年間の推定相対リスク減少率は96.8%。パンデミック期間中に90%以上の相対リスク低下がみられたのは、中国(97.2%)、アメリカ(90.4%)、ブラジル(93.6%)、メキシコ(96.7%)と日本(98.4%)となる。
新型コロナウィルスの致死率は2年半の経過中に徐々に低下しており、インフルエンザにおける致死率(0.05-0.5%と推定)に近づいている。致死率低下の原因として、ワクチン接種のひろがりや治療の効果、感染による免疫獲得、ウィルス自体の弱毒化などの複合的効果が推測される。
この研究の意義は、世界中で大流行している新型コロナウィルスの致死率が低下していることを、大規模データにより明らかにしたこと。今後の新型コロナウィルスに関する政策や行動指針を考えるための参考にすることができる、重要なデータといえる。