千葉⼤学環境リモートセンシング研究センターの⼊江仁⼠准教授らの研究グループは、新型コロナウイルスの感染拡⼤が急速に進⾏した 2020 年に焦点を当て、地上や衛星などから得られた⽇本の⾸都圏の⼤気データを統合して解析し、⼆酸化窒素(NO2)、ブラックカーボンなどの光吸収性エアロゾル、ホルムアルデヒド(HCHO)の⼤気中濃度のウィークエンド効果(週末と平⽇の濃度差をもたらす効果)が例年に⽐べて顕著に増⼤していたことを明らかにした。この調査結果は、他国とは異なり、⽇本の⼈流が週末に特に減少したことと相関していた。このことから、新型コロナウイルス感染拡⼤を抑えるための⾃主的な⾏動制限の結果、⼤気微量成分の濃度に⽇本特有の変化が⽣じたものと考えられるとしている。
この研究成果は、9⽉29⽇に欧州地球科学連合(EGU)の英⽂電⼦ジャーナル「Atmospheric Chemistry and Physics (ACP)」に掲載された。
□研究の背景□
新型コロナウイルスの感染拡⼤が急速に進⾏した2020年に、世界各地の都市がロックダウンされた。それに伴って⾃動⾞や産業活動による⼤気汚染物質の排出が抑制された結果、⼆酸化窒素(NO2)などの⼤気中濃度が例年より著しく低下したことが多くの研究で⽰されてきた。このように、新型コロナウイルス問題は、⼈間の健康や地球環境に及ぼす⼈間活動の影響を評価する特異な機会としても重要視されている。
地表付近ではNO2は数時間で消失するので発⽣源近傍で⾼濃度を⽰す。このため、NO2は⼈為的な排出源を⽰す優れたマーカーであり、⻑期連続観測は⼤気汚染対策の効果検証や経済不況の影響評価などに利⽤されている。
また、⼈間活動との関連から、⾃動⾞や産業活動などから排出される⼈為的なNO2の濃度はしばしば週内で特徴的な変動を⽰す。
このようにして週末と平⽇の濃度差をもたらす効果はウィークエンド効果と呼ばれる。多くの世界の都市では、⼈為的な窒素酸化物排出量の減少のため、NO2のウィークエンド効果が近年⼩さくなっていることが報告されている。このような⻑期的なトレンドの中で、新型コロナウイルスが発⽣した。