□ポイント■
〇台風勢力を正確に推定するには、台風の目の雲(壁雲)の形状を高精度で把握することが必要
〇従来の静止気象衛星では一定角度での撮像のみで、3 次元構造観測は不可能で、かつ解像度も低い
〇複数角度からの連射撮影が可能な超小型衛星DIWATA-2により台風11号の壁雲の詳細な3次元観測に成功
北海道大学、東北大学及びフィリピン政府が共同開発した超小型衛星が、沖縄に接近した台風11号の壁雲の詳細な3次元観測に成功した。台風勢力を正確に推定するには台風の目の雲(壁雲)の形状を高精度で把握する必要があるが、これまでのほとんどの衛星では詳細な構造を立体的に撮影することは不可能だった。北大、東北大及びフィリピン政府が共同開発し、2018年10月に打ち上げられたフィリピンの第2号超小型衛星「DIWATA-2」は、カメラの視野を特定の緯度経度に固定しながら撮影する高度なターゲットポインティング機能を有します。今回、非常に強い台風11号の目を標的に、複数角度から連写撮影することに成功した。
8月30日、発達した台風11号の中心部を撮影するために、DIWATA-2が台風に最接近する頃の台風の位置と進路予測を参考に推定し、搭載カメラの視野を台風中心部に向けるターゲットポインティング運用を行った。
DIWATA-2には、地上解像度5㍍から7㎞までの5種類のカメラが搭載されているが、今回は、モノクロ魚眼カメラと、地上分解能55㍍の高解像度モノクロカメラを用いて撮影した。
日本時間8月30日14時43分51分に魚眼カメラで撮影。衛星は台風のほぼ真上に位置し、地球の円形の縁は中心から約3000㎞の距離にある。台風を中心に、視野の周縁部までスパイラル状の雲を捉えた。また14時42分51秒から:44分51秒の2分間には、視野に台風中心を捉えたまま6秒ごとの露光を18回繰り返す連写を行った。
その中から24秒ごとに撮影された4枚では、台風の目の中に、筒状に切り立った「壁雲」が確認できる。また目の底に見えている暗い領域は海面で、その上に見える白い模様は、低高度(500-800㍍)の雲。この目の穴に対し、やや斜めから撮影しているために、衛星が位置を変えるに従い、見えている海の面積が変化するのがわかる。
壁雲や雲頂付近の雲の模様は見る角度によって形状が変わるため、それによって雲の3次元構造を推定することが可能になる。
発達した台風の中心部の詳細な3次元観測は、世界的に例がない。今後、解析を進めることで、台風の目の詳細な構造を明らかにし、台風勢力との関係を明らかにする計画だ。