国立がん研究センターなどの研究チームはこのたび、転移リスクの少ない2cm以上の早期大腸がんに対して行った、高周波ナイフで切除する新たな内視鏡治療(ESD)の効果などをまとめて発表した。それによると、これまでの内視鏡治療(EMR)よりも再発リスクを抑えることに成功。5年後の生存率も93.6%と高い割合を示した。がんセンターは新たな手法について、標準治療になることが強く望まれているとしている。
ESDは、国立がん研究センターによる内視鏡用の高周波ナイフ(ITナイフ)の開発や手技の確立により開発された治療方法で、2006年4月に早期胃がんの内視鏡治療として保険適用された。その後、早期大腸がんでの応用も進み、2012年4月の保険適用から全国に普及していった。一方、腸管を切除する外科手術と内視鏡的に輪状の細いワイヤー(スネア)を用い病変を切り取るEMRは、簡便かつ短時間で治療可能だが、スネアの直径を超える2cm以上の病変は分割して切り取ることで取り残しが生じ、再発につながることが課題だった。
研究チームは2013年2月から2015年1月にかけて、治療のために参加施設で大腸ESDを試行した1883人分(1965病変)について経過観察を行った。その結果、5年生存率は93.6%。再発した人は8人(0.5%)いたが、いずれも内視鏡による追加治療で切除することができている。
また、観察中には腸に穴が開く穿孔(せんこう)が2.9%、術後出血が2.6%確認された。だが、そのほとんどが治療中の対応が可能であり、別に外科手術が必要だったのは0.5%だった。
この結果を受けて研究チームは、「転移リスクの少ない2cm以上の早期大腸がんに対し、ESDで治療を行った場合の長期的な安全性と治療効果が大規模なデータで初めて明らかになった」と説明。「今後、世界的にもESDが標準治療となり、世界でも患者数の多い大腸がんのさらなる生存率の向上と、術後の患者のQOLの維持に大きく貢献することが期待される」と述べた。そのうえで、「本研究により2cm以上であっても転移リスクの少ない早期大腸がんでは、ESDが治療の第一選択となることにより、早期発見・治療のメリットがさらに増すことになる」としている。