順天堂大学医学部は8月1日、今年6月に医学教育研究室で行った国内初のロールプレイ授業「手話の病院」の模様をYouTubeで公開(https://youtube/fxst42WefYk )したことを発表した。このプログラムは、ろう者が医療者役、医学生が患者に扮して病院を受診するシミュレーション教育を行うことにより、言葉が通じない状況で医療機関を受診するというのはどのようなことなのか体験を通して学ぶのが狙い。
シミュレーションは同研究室の医学生(3年生)6人を対象に実施。医師、看護師、薬剤師、医療事務職員、手話通訳者役として筑波技術大学障害者高等教育研究支援センターの大杉豊教授やろう者、手話話者なども参加し行われた。
実験では医学生が、患者とその付き添い役に扮し、2人1組で受診。学生には事前に五十音と基本的な手話をレクチャーしていたものの、待合室において手話で呼び出されていることに気付いていなかったり、医師にうまく症状が伝えられずにもどかしさを覚えたり、処方薬の説明が十分に理解できず不安な表情を浮かべたりする場面がみられた。
次に言葉が通じにくい状況下で、通訳者の存在によってコミュニケーションがどのように変化するかを検証した。当初、ろう者の薬剤師が手話と筆談を使って処方薬を説明する場面では十分な意思疎通が難しかったが、手話通訳者を介することで互いに情報が適切に授受できるようになった。
ロールプレイ終了後には双方の参加者が集まり、内容を振り返った。受付・診察室・薬局それぞれの場面において、医療者側、また、患者側として気がついたことや感じたことについて意見交換を実施。医学生からは参加中に、「病院がとても静かで心配になった」や「伝わっているか、相手が何を言っているのかもわからず、帰りたくなった」、「通訳者の日本語が聴こえたときは安心した」といったことを感じたというコメントがあがった。そのうえで、「医療通訳者をいつでも呼べる体制が必要」、「医療安全の面からも通訳者は不可欠な存在」、「医療機関を受診するうえで、困難を抱える人は聴こえない・聴こえにくい人に限らない。どのような人でも安心して受診ができるようにするためには、医療がその存在を知って想像力を働かせ、寄り添うことが大切だ」など、医療通訳の重要性や必要な体制整備、医療者側の心構えに触れるような意見も寄せられた。