慶応義塾大学理工学部の満倉靖恵教授などの研究グループは12日、椅子の脚の下にセンサーを設置することにより、座っているだけで不整脈を自動的に検出することに成功したと発表した。将来的には、家庭内や運転中などで起こる急性心筋梗塞や心不全といった疾患の予測に役立つことが期待されるとしている。
研究グループは、椅子の脚の下に敷くタイプの過重センサーを製作した。人が上に座っている際に得られるBCG信号(心弾道図)から心電図を予測し、正確に心拍・心拍変動を抽出することで不整脈などの心疾患につながる因子を自動で検出する仕組みだ。ソファーや食卓の椅子などでも脚の下に敷くだけで心拍を測ることができるつくり。信号を受信するチャンネルは4つあるが、少なくとも2つのチャンネルからのデータを用いており、目的によって変更も可能だという。
効果の検証に向けては、心疾患を持たない20代の13人と不整脈を持つ40代の患者の計14人を対象に実験を実施。被験者にセンサーを装着した椅子に座ってもらい、目を開けてリラックスした状態で10分間の心臓の記録を取得した。取得したデータは、同時に被験者に張り付けていた心電図計から得られたデータと比べても、正確な値を検出していた。
心疾患は日本人の死因の第2位で、家庭内などで起こるケースも少なくない。そのため研究グループは将来的に、今回の研究成果を家の中の椅子や車の座席などに展開させていく構想を紹介している。具体的にはモニタリング機能を向上させ、平時から健康観察を行うことなどを目指す考えだ。