■ポイント□
〇マスクの使用実態と、内側・外側に付着する細菌・真菌に着目した世界初の研究
〇有害な菌も検出されたことから、マスクは1日程度で交換することを推奨
〇研究成果を生かし、コロナ禍で習慣となったマスク着用において、衛生的で正しい方法を啓発
近畿大学医学部微生物学教室の朴 雅美講師を中心とする研究グループは、アンケートによってマスク使用の実態調査を実施するとともに、使用済みマスクに付着する細菌・真菌を培養し、数と種類を同定した。マスクに付着した細菌と真菌は、多くが無害な菌だったが、一部有害な菌も検出された。マスクの使用状況や生活習慣と、マスクに付着する細菌・真菌との関連性を解析した世界で初の研究で、この成果はコロナ禍で習慣となったマスク着用について、衛生的で正しい方法の啓発に活用できる。
この研究は〝オール近大〟新型コロナウイルス感染症対策支援プロジェクトの一環として実施された。論文は7月18日に、自然科学分野を対象とした科学雑誌「Scientific Reports」にオンライン掲載された。
研究なかったマスクのウイルス感染
コロナ禍で、常時マスクを着用する新しい生活スタイルが定着した。不織布マスクのウイルス感染に対する有効性は広く研究されており、屋内や会食をする場面では着用が推奨されている。
一方で、使用済みマスクの衛生面、特に付着した細菌や真菌の実態に着目した研究はなかった。細菌や真菌は日用品などから高頻度に検出されるが、なかには身体に害をもたらし、病気を引き起こす原因となる微生物も存在している。
研究では、109人のボランティアにマスク使用に関するアンケート(素材、使用日数など)を実施して使用実態を調査するとともに、マスクの内側・外側それぞれに付着した細菌と真菌を培養し、菌の数および種類を調べた。
その結果、細菌の数はマスクの内側で多い一方、真菌の数はマスクの外側で多いことが明らかになった。また、マスクの使用日数が長いほど、真菌の数は有意に増加したが、細菌の数は増加しなかった。さらに、性別や日々の習慣と菌数・菌種の関係を調べた結果、公共交通機関の利用有無や、うがいの習慣などの条件が菌の増減に影響することはなかった。
今回の研究で検出された細菌・真菌の大部分は通常病気を起こさない菌だが、黄色ブドウ球菌、腐性ブドウ球菌、シュードモナス・ルテオラ菌、ケカビ、アスペルギルス、フォンセカエなどの、病気の原因となる菌も検出されたことから、マスクの継続使用には注意が必要であり、1日程度で交換することが推奨される。
また、有害な菌はマスクの外側で検出される頻度が高いことから、使用しているマスクの外側と内側を間違って装着することがないように気をつける必要がある。
このように、今回の研究成果は、コロナ禍で新たな習慣となったマスク着用について、衛生的で正しい方法の啓発に活用できる。