■ポイント□
〇「くまもとあか牛」の放牧が盛んな阿蘇の大草原は水を蓄える力が強く、地域の防災に貢献
〇カシューナッツ殻液を含む飼料を牛に与えることで牛由来のメタンガス排出抑制を目指す取り組みを開始
〇エシカル消費に対応した取り組みについて域外からの視察・研修の受入を通じ平日観光の活性化とセットで推進
慶應義塾大学大学院メディアデザイン研究科(KMD)は、熊本県南阿蘇村と熊本県畜産農業協同組合連合会とともに、南阿蘇村に位置する大草原と共生してきた「くまもとあか牛」の産業支援を通じて、人や環境、社会に配慮した『エシカル消費(※)』に対応した産業の創出を目的として、7月12日に相互連携協定を締結した。
この協定は2006年に締結された南阿蘇村と東海大九州キャンパスとの連携協定を踏まえ、生産者支援組合である熊本県畜連と協働して販売促進支援の実績があるKMDとの連携に拡大することで、農業では生産から販売までのサポートを、環境・観光では地域と都市部との新たな連携を推進する。
※エシカル消費:地域の活性化や雇用なども含む、人や社会・環境に配慮した消費行動
■阿蘇の草原の持つ水源涵養力とその維持に貢献する「くまもとあか牛」のエシカル化を目指す ここ数年の食に対する環境負荷軽減やトレーサビリティ(記録の共有)、安全性などのニーズの高まりに対して、協定に基づきエシカルな和牛の生産を通じた対応を進める。特に畜産業におけるCO2排出量の大きな課題であるメタンガス削減に向けて、東海大九州キャンパス(農学部)と連携し、カシューナッツ殻液を含む飼料を牛に与えることで牛由来のメタンガス排出抑制を目指す取組を支援する。
また、九州の水源として重要な役割を担っている阿蘇の大草原における「くまもとあか牛」の放牧を通じた草原環境の維持(水源涵養力)と観光振興施策の検討を通じて、生産者の所得向上や担い手育成、雇用創出にも取り組む。
■ 協定に基づく今後の事業実施体制 協定に基づき、「地域課題の解決」と「民間企業による支援(企業版ふるさと納税の活用など)」の受け皿として、南阿蘇みらいプロジェクト(仮)を組成し、地域内外との連携を拡大・推進する。
これにより地域課題の解決だけでなく、大企業やベンチャー企業の新商品・サービスでの持続可能性の実証の場としても活用することで、都心部やデジタル上では実証できない課題などの洗い出し、解決の支援を行うイノベーションを創出する体制の構築を目指す。