2022年7月5日 医療用モバイルアプリの選択基準に 京大研究員らが日本語版客観評価スケールを開発

京都大学大学院医学研究科健康増進行動学教室の山本一道客員研究員らは、オーストラリア・クイーンズランド工科大学との国際共同研究として、医療用アプリの国際的な客観的評価基準である『モバイルアプリ評価スケール(MARS)ユーザー版』の日本語版を開発した。同時に、信頼性と妥当性を検証し、原版と同等であることを確認した。

MARSは2016年にクイーンズランド工科大学研究者らによって開発された医療用アプリの客観的な評価スケール。四つの客観的評価項目(エンゲージメント、機能性、見た目・デザイン性、情報)と一つの主観的評価項目の合計23問で医療用アプリの評価を行う。世界的な医療用アプリ評価スケールのスタンダードの一つとして使用されている。

 

急増する医療アプリ、客観評価は不十分

ここ数年激増する医療用アプリの客観的評価は現状では十分に行われていないのが現状。また、アプリによっては健康に害を与える可能性も指摘されており、トレーニングを受けた評価者による質的評価を行うツール開発が待たれていた。

今回、山本客員研究員と研究を進めたのは、坂田昌嗣同助教、古川壽亮同教授らと、東京大医学部附属病院呼吸器外科の篠原義和 病院診療医、同院臓器移植医療センターの佐藤雅昭 准教授、同院呼吸器外科の中島淳 教授ら。

山本客員研究員らは「モバイルアプリ評価スケール(MARS)」の研究者版をすでに開発・信頼性と妥当性評価を行ったが、今回の研究では疫学・医学・心理学・社会学・システム開発・医学翻訳の専門家らにより科学的手順により「ユーザー版」の日本語版評価スケールを開発。現在、東京大大学院医学系研究科呼吸器外科学教室が開発中である肺移植術後オンライン管理システムを用いて、信頼性と妥当性を確認した。

これらのツールにより開発者・研究者だけでなく、アプリの使用者がアプリを選択する際の客観的な基準となることが期待される。さまざまな医療アプリの研究、開発におけるアプリのアセスメントとユーザーによる医療アプリの選択などに使用され、今後の指針などにも役立つと考えられる。

 

アプリ選択の客観評価の参照に

この研究では、原版の開発者の協力のもと〝文化横断手法〟という方法を用いて、疫学・医学・心理学・社会学・システム開発・医学翻訳の専門家からなるグループによる日本語版開発を行った。

「モバイルアプリ評価スケール(MARS)」には「研究者版」と「ユーザー版」の2種類が存在し、同じアプリを開発者側と使用者側双方の異なる視点から評価することが可能となっている。

研究では、先に発表された「研究者版」の開発と信頼性と妥当性の評価に続き、「ユーザー版」(uMARS)に対して、東大大学院医学系研究科呼吸器外科学教室で現在新規開発中である肺移植術後患者のためのオンラインモニタリングシステム「LT‐FollowUp」を用いて35人の術後患者による評価により検証。同じく信頼性と妥当性が原版と同等であることを示した。

これらのツールによりアプリの開発者、研究者だけでなく、使用者がアプリを選択する際の基準となることが期待される。同ツールによりさまざまな医療アプリの研究やアプリ開発におけるアセスメントだけでなく、アプリの使用を考える使用者がアプリの選択の際に客観的な質的評価を参照することが可能となり、ひいては健康増進などに貢献することが期待される。また、この研究に共同研究者として参加した原版の開発者と引き続き評価スケールの改訂版などに取り組む予定となっており、国内でのこの分野の国際的な標準の維持が期待できる。


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