■ポイント□
〇軽度認知障害患者に対し、ビフィズス菌摂取介入のランダム化二重盲検並行群間比較試験を実施
〇ビフィズス菌介入群で認知機能改善と脳萎縮進行の抑制を確認、認知機能がより低い患者群でビフィズス菌の占有率が低いことを確認
〇脳腸相関の観点から、プロバイオティクスによる認知機能改善・脳萎縮進行予防の可能性が示された
順天堂大学大学院医学研究科ジェロントロジー研究センターの浅岡大介准教授、大草敏史特任教授、佐藤信紘特任教授らは、ビフィズス菌の摂取による軽度認知障害(MCI:Mild Cognitive Impairment)患者の認知機能改善と脳萎縮進行の抑制効果を確認した。同研究グループが軽度認知障害患者に対してビフィズス菌摂取の介入を行った結果、認知機能のうち見当識などの症状改善とMRI画像解析による脳萎縮進行の抑制を確認した。また、介入前の認知機能スコアを高低別に腸内フローラを比較したところ、認知機能がより低い患者群においてビフィズス菌の占有率が低いことも判明した。この成果は、ビフィズス菌といったプロバイオティクス介入による認知機能改善・脳萎縮進行予防の可能性を示すもの。この研究論文はJournal of Alzheimer’s Disease誌のオンライン版に5月7日付で公開された。
25年には65歳以上の5人に一人が認知症
超高齢社会のわが国では、現在85歳以上の4人に1人が認知症といわれ、2025年には65歳以上の高齢者の5人に1人の約700万人に急増すると推測されており、社会的な問題となっている。
一方、認知症の前段階である軽度認知障害の患者は、現在国内では約400万人いるとされ、世界的には国によって65歳以上の人口の7~42%が軽度認知障害の状態であると推計されている。さらに、軽度認知障害患者のうち、年間10~30%が認知症に移行すると推測される。
軽度認知障害や認知症に対する有効な治療法がないなか、発症予防に注目が集まっており、特に、生活習慣の改善など日常生活の中で実践できる有効な対策が求められている。
現在進められている発症予防対策に関する研究で、さまざまな全身的な疾患と〝腸内フローラの異常〟との関連が報告され、腸内フローラの制御を介した健康維持への期待が高まっている。2002年には順天堂大消化器内科が中心となって、腸内細菌と中枢神経系との相関関係、いわゆる脳腸相関に関する学会を世界に先駆けてわが国で立ち上げた。