■ポイント□
〇スポーツイベントとしてJリーグを想定し、声出し応援に関する感染リスク評価を実施
〇Jリーグの声出し応援段階的導入試合における開催条件での感染リスクは、現状認められている「観客が100%入場で声出し応援なし」条件の感染リスクを1とした場合、0.46〜0.48と小さくなると評価
〇声出し応援時の感染リスクはマスク着用率の低下、ウレタンマスク率の増加で大きく増加
〇声出し応援のリスク低減には、高いマスク着用率、不織布マスクの着用の徹底が重要
国立研究開発法人産業技術総合研究所新型コロナウイルス感染リスク計測評価研究ラボは、研究チームMARCOや公益社団法人日本プロサッカーリーグ(Jリーグ)などと連携し、試合観戦時での観客の新型コロナウイルス感染リスクと対策効果の評価を行ってきた。
現状では、Jリーグなどのイベントでは、声出し応援は禁止されているが、6月11日、12日にはJリーグ公式試合での声出し応援の段階的導入が始まった。コロナ前の日常を取り戻すためには、声を出す応援や各種の対策に関する感染リスクの評価は、今後の対策指針を決める上で重要となる。
産総研などの研究では、実際のスタジアムで声出し応援をした時の感染リスクについて、慶應義塾大学(奥田知明教授)、花王㈱、㈱鹿島アントラーズ・エフ・シーと共同で実施した大声時のマスクの飛沫抑制効果の研究成果を活用し、声出し応援の影響やマスクの着用率や種類、座席の間隔、観客数の制限などの対策効果を評価した。
その結果、Jリーグが声出し応援を段階的に導入する際の試合開催条件(50%以下の収容人員、声出し席の不織布マスク着用、マスク着用率95%、声出し席の市松・格子配置)の感染リスクは、現状認められている条件(観客が100%入っている状態で声出し応援なし)の感染リスクを1とした場合、0.46と小さくなり、対策が遵守されれば、リスクが十分に低い状態と評価した。
また、声出し応援時の感染リスクは、マスク着用率が50%に低下すると2.96倍になるなど、マスク着用率の低下、ウレタンマスク率の増加で大きく増えるため、リスク低減に向けては、高いマスク着用率、不織布マスクの着用といった基本的な対策が大切であることを改めて明らかにした。
一方で、日本でのプロスポーツ興行としての声出し応援は6月10日時点では再開されておらず、この評価で活用したパラメーターは既往知見から設定したもの。6月のJリーグ公式試合での声出し応援の段階的導入で研究ラボが実施する現地調査結果なども踏まえ、実際の試合での観客の行動などのパラメーターを収集し、さらに詳細な評価を進める予定。