■ポイント□
〇バイタルサインなどを受け入れ先病院の医師らに伝送
〇搬送先受入れの受け入れ準備がスムーズに
〇脳卒中や重症外傷などへの的確な救急措置指示が可能
順天堂大学は、医学部附属静岡病院(静岡県伊豆の国市)で、救急車で搬送された重症患者に対する早期治療開始と転帰・救命率向上を目的に、同病院の救急診療科と駿東伊豆消防本部(静岡県沼津市)、AVR Japan㈱(東京都港区)と連携し、今年3月1日から病院搬送前救急活動にスマートグラス(VUZIX M400)を試験導入し、有効性の検証を実施している。この取組は、順天堂大オープンイノベーションプログラム「GAUDI」の支援のもと実現した。
国内初の〝医療×消防×企業〟の多機関連携取組
スマートグラスは現場の状況を映像と音声によりリアルタイムに遠隔へ伝送し、双方向にコミュニケーションを図ることが可能なデバイス。病院内でのスマートグラスの活用はすでに他施設より報告されているが、今回の取組は〝医療×消防×企業〟の多機関連携であり、国内初の取組となる。
今回の試験導入では、病院搬送前救急活動で、救急隊員がスマートグラスを装着・起動し、患者の救急車内収容時から病院搬入までの状態や変化、バイタルサインの推移、12誘導心電図などの情報を搬送先の病院でスタンバイする医師や看護師にリアルタイムに映像と音声により、伝送する。
伝送された情報を院内でリアルタイムに共有することで、病院到着前のより早い段階で院内各部署の診療体制や治療方針の検討・決定につながることが期待される。
現在は、救急隊員と院内で待機する医師との通信手段は携帯電話による通話のみで、情報共有は音声だけで行われている。しかし、スマートグラスを活用することで、撮影の手間をかけることなく、搬送時に映像による情報共有が可能となる。それにより、これまで共有することができなかった患者の表情や容態変化をリアルタイムに映像で共有することが可能となり、搬送先の受け入れ準備がスムーズに進められる。さらに、搬送中の重症外傷や脳卒中、心血管系疾患に対して院内医師による的確な緊急処置(輸血、手術、血栓溶解療法、血管内治療など)の指示が可能となる。