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〇死後長時間経過した魚からでも子孫創出が可能に
養殖場や水族館等で貴重な魚を飼育していると、停電や設備トラブルなどにより魚が死亡し、貴重な魚を失う事故が生じることがある。これらの事故は、見回り頻度が少ない夜間に頻繁に起こることが知られている。夜死亡した魚を朝になって発見した場合、水中に死亡個体が長時間放置されることになり、この間に体内の酵素等によりタンパク質が分解され、細胞劣化が進んでしまう。このため、どんなに貴重な魚であっても、死後時間のたった魚の遺伝子資源を次世代に繋ぐことは不可能と考えられていた。
こうした現状を踏まえて、東京海洋大学市田健介らの研究チームは、これまで技術確立をしてきた代理親魚技術を応用することで、死後長時間経過した魚からでもその子孫を作り出すことを可能にした。
具体的には、死後12-24時間経過したニジマスから卵と精子のおおもとの細胞である〝生殖幹細胞〟を単離して、これらを別のニジマス個体(代理親魚となる宿主)に移植。その結果、死後12時間経過後のニジマスの生殖幹細胞であっても、正常に宿主の卵巣や精巣へと取り込まれ、その後増殖し卵や精子へと分化してゆく様子が観察された。
その効率は死後直ちに移植を行った場合と比較しても全く遜色なかった。死後24時間経過後のニジマスの生殖幹細胞では、移植効率が低下したものの、同様に移植後の宿主の卵巣や精巣内で増殖、分化が確認された。
この研究結果は、死後の経過時間が12-24時間であれば、代理親魚技術を応用することで、それらの生殖幹細胞を卵や精子へと分化させることが可能であることを意味している。