■ポイント□
〇腸内細菌叢移植療法への注目集まる
〇安全な腸内細菌叢溶液の製造・提供システムを構築
〇先進医療でのさらなる実装化を展開へ
順天堂大学(東京都文京区)とメタジェンセラピューティクス㈱(山形県鶴岡市、MGTx)は、共同研究講座「細菌叢再生学講座」を4月1日付けで開設した。
ここ数年、腸内細菌叢の乱れ(ディスバイオーシス)とさまざまな疾患との関連が明らかになっており、ディスバイオーシスを改善し、健康な腸内細菌叢の再生を目的とした腸内細菌叢移植療法(FMT)が副作用の少ない細菌学的治療として注目が集まっている。
順天堂大消化器内科腸内細菌研究グループは潰瘍性大腸炎(UC)に対して有効なFMT手法の確立を目指し、抗菌剤療法併用FMT(A-FMT)の臨床研究を世界に先駆けて開始した。
その結果、UC患者約200例の臨床研究データから治療効果が腸内細菌叢の変化と関連し、抗菌剤療法との併用が効率的な腸内細菌移植に貢献していることが明らかになってきた。
FMTが新たな治療戦略として注目を受けるなか、MGTxは以前より進めている安全な腸内細菌叢溶液の製造・提供システムを構築し、2022年から先進医療でのさらなる実装化の展開を計画している。
具体的には、①抗菌剤療法併用FMT(A-FMT)の安全で効果的な臨床実装に関する研究、②FMTにおける有用菌の定着メカニズムの探索研究に取り組む予定。また、③質の高い臨床評価と腸内細菌叢データ蓄積による、治療効果の向上方法の研究、④FMTを行った患者に対する有効腸内細菌種の定着と治療奏功の関係を分析、⑤ディスバイオーシスが関連する疾患(消化器疾患、免疫関連疾患、中枢性疾患など)に対する臨床研究・創薬研究-といったことも視野に入れている。