■ポイント□
○紀州備長炭の製造時に副産物として生成する、木酢液を有効利用したSDGsの取り組み
○褐色で刺激臭をもつ木酢液の、臭いと色を適度に抑えて商品化
○浴槽に加えることで、弱酸性浴を楽しむことができる産学連携商品
近畿大学薬学部と㈱KIM(和歌山県御坊市)は、入浴剤などに利用できる精製木酢液「Moder」を共同開発し、4月1日に発売した。
薬学部の多賀 淳教授が、紀州備長炭の炭焼き職人から「紀州備長炭の木酢液をもっと広げたい」と相談を受け、紀州備長炭の製造時に採れる木酢液の臭いと色を、低コストで低減させる方法を開発した。
この共同研究は、近畿大が平成29年(2017年)に包括連携協定を締結したアイザワ証券㈱(東京都港区)との連携事業である「産学連携によるビジネスマッチング」により実現した。
紀州備長炭は人気の高い高級炭で、和歌山県を代表する名産品の一つ。木酢液は、炭を製造する際に副産物として生成される酸性で刺激臭をもつ褐色の液体で、薄めて入浴剤や土壌改良剤として使用される。
ここ数年は、木酢液の有効成分に関する研究が数多く行われていますが、その臭いや色調の強さから抵抗感のある人も多く、発がん物質とされるベンゾピレンなどの有害物質が含まれる場合があるとの報告もある。
今回、多賀教授が、紀州備長炭の炭焼き職人から「紀州備長炭の木酢液をもっと広げたい」と相談を受けたことから、和歌山県と和歌山県木炭協同組合の協力を得て、木酢液をできる限りそのままの形で有効利用するため、適度(moderate)に臭いや色を低減させる研究を行った。
今回開発した方法では、フルフラールなどの低分子(小さい分子)の香気成分に比べ、ベンゾピレンのような高分子(大きい分子)を優先的に除去する精製条件を選び、木酢液の風合いを適度に抑えている。
また、日本食品分析センターによる分析試験では、最適化した条件で精製した紀州備長炭の木酢液中のベンゾピレン含有量が、同センターでの分析方法における検出下限値(1ppb、1000リットル中に1㎎)以下であることを確認した。
こうして開発した精製木酢液「Moder」は、50~100mLを浴槽(約200㍑のお湯)に加えると弱酸性を示し、弱酸性浴を楽しむことができる。ボトルのデザインには薬学部生も参加しており、入浴を楽しむことでリラクゼーション効果が期待でき、日々の生活や人生の質を高めることにつながればという願いを込めて、「Living & Life」の文字、またその頭文字の「L」を形作るように、商品名とコラボマークを配置した。