■ポイント□
○脚立の正しい使用方法が徹底されず
○農業用具の事故件数の4割に
○原因と対策を解説
JA共済連(全国共済農業協同組合連合会)と農研機構(国立研究開発法人 農業・食品産業技術総合研究機構)は、農作業事故を当事者の視点から疑似体験する体験学習型プログラム『農作業事故体験VR』で、新たに「脚立 転落編」「農用運搬機 転倒・積み降ろし作業編」の二つのコンテンツを共同で開発し、4月から提供を開始した。
農作業事故は年間約7万件発生していると推測され、特に死亡事故の発生割合は、建設業の約3倍、全産業の10倍以上と高く、社会的な課題となっている。
JA共済連では、農作業事故の未然防止に貢献するため、過去の共済金支払データを活用して農作業事故の発生傾向を分析し、農業をめぐる事情や農業機械の構造・操作等に詳しい農研機構監修の下、「乗用型トラクター 転倒編」など発生頻度の高い事故場面を再現した五つのVRコンテンツを開発した。
令和2年4月から『農作業事故体験VR』として全国展開し、農作業安全研修会、農業祭や農機具展示会等のイベントで活用されている。
このコロナ禍でも、『農作業事故体験VR』は農業関係諸団体を中心に着実に利用されており、体験者アンケートでは「自分の目線で体験ができ、ためになった」「ちょっとした不注意が事故になることを理解した」など、9割以上から高い評価を得ている。
そこで、農作業事故未然防止の取組みを更に強化するため、新たなコンテンツとして、「脚立 転落編」、「農用運搬機 転倒・積み降ろし作業編」を追加することとした。
脚立は、果樹の収穫や樹木のせん定などの高所作業等で日常的に使われるが、正しい使用方法が徹底されず、農業用具での事故件数の約4割を占めている。また、農用運搬機は、移動中の機体の転落・横転が目立ち、すでにVRコンテンツとしている乗用型トラクターや耕うん機とともに死亡事故件数が多い状況にある。
今回開発した二つのコンテンツは、シナリオ作成からVR動画の撮影・制作など全ての工程をJA共済連と農研機構が共同して行い、体験者が共感できるよう事故発生シーンのリアリティを追求し、具体的に原因と対策を解説している。
JA共済連と農研機構は、互いが有する知見を活かして開発した同コンテンツの活用を通じて、農作業事故を1件でも多く減らし、持続可能な農業に貢献することとしている。