愛知県など東海北陸6県を管轄する総務省中部管区行政評価局が実施した放課後児童クラブの安全対策に関する調査を行政評価局として初めて実施し、1)施設の約3割でマニュアルが未作成、2)防災訓練を実施していない施設がある、3)事故・ケガ発生時の対応を取り決めていない施設がみられた―などの実態を明らかにした。
調査は昨年6月から今年3月まで愛知県、名古屋市、豊橋市、岡崎市、一宮市、春日井市、豊川市に所在する放課後児童クラブのうち93施設を抽出し書面調査を行い、うち22施設について実地調査を実施した。
調査結果のうち、災害や事故・ケガ等発生時の対応マニュアルの作成等の状況をみると、調査した施設の約3割でマニュアル等が未作成であり、これらは全て民立の施設だった。民立の施設では、マニュアルの作成に当たっての情報が少なく苦慮し、施設からは、マニュアルなどの作成に係る助言等を行政機関に求める意見があった。しかもマニュアルを作成している施設の6割強で職員へのマニュアルの周知が不徹底となっていた。
放課後児童クラブ運営指針には、放課後児童クラブは、災害や事故・ケガ等の発生時の対応に関するマニュアルを作成することと定められているが、作成に当たっての具体的な指針等は国等から示されていない。
また、災害や事故・ケガ等の発生時には迅速な対応が求められるが、マニュアルを確認しながら対応する余裕はないため、事前にマニュアルを全ての職員に周知徹底し、その内容を職員間で共有しておくことが重要。
災害発生時に備えた取組に関して調査したところ、災害発生時の対応で重要と考えられる役割分担などの組織体制、避難場所、経路の設定、災害発生直後の基本行動及び避難判断、保護者への連絡・引渡し、関係機関との連絡体制は、項目によって取り決めていない施設がみられたが、各項目において工夫して取り組んでいる施設もあった。
想定され得る災害の種類ごとに防災訓練を実施していない施設があった。また、大規模な地震を想定し、施設から離れた避難場所への避難訓練を実施していない施設があった。中部管区行政評価局では、「災害発生時の対応で重要と考えられる項目を取り決めていない施設では、災害が発生した際には職員がその時々の状況に応じて判断するなどとしているが、対応すべきことは多岐にわたり、全ての職員が緊急時に慌てず迅速・適切に対応するためには、これらの事項について取り決めておくことも一方策」と指摘。また、災害は、種類ごとに対応が異なることから、想定され得る災害現象に応じたマニュアルを作成することも提言している。
事故・ケガ発生時に備えた取組についても、対応手順、応急処置の方法、医療機関への受診、保護者への連絡・対応など項目によって取り決めていない施設が3割弱から5割弱程度みられたが、各項目において工夫して取り組んでいる施設もあった。
取り決めている施設の中には、対応手順をフロー図化したり、施設内に貼り出すなどの工夫をしている施設やあった。また、応急処置方法についてマニュアルや施設独自の資料、市から提供された研修資料を活用するなどの方法で整備したり、保護者への連絡に関して、事故・ケガが発生した際に一枚紙の報告書を作成し保護者に手交するなど症状や処置内容を詳細・確実に伝える工夫している施設がみられた。
中部評価局では、「事故・ケガ発生時の対応で重要と考えられる項目を取り決めていない施設では、経験豊富な職員や看護師の資格を持つ職員が状況に応じて判断するとしているが、当該職員が不在時でも、誰もが迅速・適切に対応するためには、これらの事項について取り決めておくことも一方策」だと提言している。