■ポイント□
○ミズゴケと維管束植物のセルロース酸素同位体比を用いて,過去の降水の酸素同位体比を解明
○北日本の気候が偏西風の位置と対馬暖流の強度に影響されていたことが判明
○気候変化が内陸部と海洋部の文化の発展に異なる影響を与えたと結論
北海道大学大学院地球環境科学研究院の山本正伸教授と同低温科学研究所の関 宰准教授は、過去4000年間の北海道北部の気候変化を復元し、文化圏の変遷のタイミングが気候変化と合うことを明らかにした。
気候変化が人間社会に与える影響を理解することは、温暖化の進行に伴う人類社会の将来を予測したり、気候変動の社会への影響を緩和したりする上で重要な要素となる。北海道は1万年前から19世紀まで、狩猟採集文化の人口密度の高い社会が変化を伴いながら存続していた世界でも稀な地域。
縄文時代以降、気候が社会や文化に与えた影響が示唆されてきたが、北海道には、それを実証するのに十分な時間解像度を持つ古気候記録がなかったため、これまで検証されていなかった。
紀元後の海洋型のオホーツク文化の南方への拡大は、対馬暖流の弱化と偏西風の南下により、冷たく乾燥した気候に変化した後に起こったことが判明。11世紀ごろのオホーツク文化の衰退は対馬暖流と延長の宗谷暖流の強化に対応していた。
一方で、内陸型の続縄文文化,擦文文化、アイヌ文化の空間分布は、南北の縁が緯度方向に移動するものの、北海道島にとどまった。文化圏の北縁はオホーツク文化の盛衰に、南縁は偏西風の南北移動に対応した稲作文化の北限の移動に規制されていたようにみえる。
この研究成果は、3月12日公開の学術誌Geophysical Research Letters誌にオンライン掲載された。