これまでの気候変動研究で、全球平均に比べて、北極域は平均気温の上昇量が大きいこと(北極温暖化増幅)が示されており、観測データでも検出されている。将来、温室効果ガスの排出量により北極温暖化増幅がどのように変化するのかシミュレーション等を実施したところ、将来の気温上昇量は温室効果ガス排出量の増加を仮定した場合の予測の方が大きくなるが、全球平均に対する北極の気温上昇率は排出量の減少を仮定した場合の方が強くなること、つまり北極温暖化増幅が強化されることが明らかになった。
この研究成果は、温室効果ガスが減少した場合、温度上昇そのものは抑制されるが、将来、北極域の温度上昇は全球平均に比べ抑制されにくい可能性があることを意味する。また、この原因は、温室効果ガスが増加した場合と減少した場合の、晩夏の北極海における氷の量の違いにあることが浮き彫りとなった。
北極温暖化増幅の強化は、将来の北極域と中緯度域の気候に影響を与える可能性があることから、温室効果ガスの排出量削減による気候変動対策を検討していく上で、考慮すべき知見となり得るので、引き続き研究を進めることが重要となる。
この研究を行ったのは、国立研究開発法人海洋研究開発機構(JAMSTEC)北極域変動予測研究グループの小野純特任研究員らが、東大大気海洋研究所の渡部雅浩教授とともに、導き出したもの。